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企業が採用内定を出した時点で、その労働者とは就労始期付解約権留保付労働契約が成立しています。すなわち、就労始期付解約権留保付労働契約とは、就労開始予定日から当該企業で就労するが就業開始日までに内定取消事由が発生した際は解約できるという労働契約です。労働契約が成立している以上、内定取消は企業側から労働契約を一方的に解約するものであり、労働者の解雇に該当します。
本件において、健康診断に異常があったことが労働契約の解約事由にあたるか否かが問題になります。
通常、内定取消の事由は内定通知等に記載して労働者に渡します。内定は解約権留保付の労働契約ですから、どのような場合に内定が取り消されるか(労働契約が解約されるか)、使用者は労働者に対して明らかにする必要があります。
仮に、健康診断に異常あったことが内定取消事由として内定通知等に記載されていた場合、内定の取消は許されるでしょうか。
この点、採用内定の取消は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実が判明し、これを理由として採用内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られます。
すなわち、仮に内定通知等に内定の取消事由を記載していても、以上の条件も満たさない限り内定の取消は認められないということです。
以上の条件を満たすためには、通常業務に支障をきたす程度の健康上の異常が必要と考えられ、健康診断の異常の程度が軽度で通常業務に支障を来さない場合には、内定取消が認められない可能性が高いといえます。