法人格否認の法理とは、法人格制度の本来の目的に照らして法人格を認めることが正義に反する場合に,法人格を否認することをいいます。法人格を認めることが正義に反する場合としては,法人格が全くの形骸化にすぎない場合,法人格が法律の適用を回避するために濫用されている場合が挙げられます。
例えば,第二会社方式を使って会社分割で優良事業部門を無償で新設会社に移転するような場合,旧会社の債権者は旧会社からの債権回収が望めない事態に陥ります。そこで,旧会社の債権者としては,法人格否認の法理を適用して旧会社の法人格を否認して,新会社に対して旧会社の債権の請求をするような場合がこれに該当します。すなわち,この場合,優良事業部門を移転された旧会社は法人格が全くの形骸化にすぎない場合か,または法人格が法律の適用を回避するために濫用されている場合にあたり,旧会社の債権者は新会社に対して請求できる可能性が生まれます。