会社が民事再生の申立をするために少なくとも必要な内容として,一般的に以下の点が挙げられます。
第1に,原則として営業利益が出ている必要があります。民事再生によって債権の一部がカットされ,金利の支払いの負担が軽減します。しかし,民事再生の利用によって経営の内容が改善されるわけではありません。すなわち,営業赤字の会社が民事再生を利用して債権がカットされたとしても,営業赤字は変わらないということです。営業赤字の場合は,原則として会社を破産等で整理する方向で検討することになります。 ただし,複数の事業部門が存在し,甲事業部門は営業黒字,乙事業部門は営業赤字,会社全体で営業赤字の場合において,甲事業部門のみを残す方向で民事再生手続が利用できる可能性があります。
第2に,手元資金が必要です。民事再生の申立は広く社会に認知され,一般的に企業の社会的信用が毀損します。民事再生の申立をすると,裁判所は手続開始決定を行いますが,この開始決定以前の債務の支払いは原則として禁止されます。そこで,これまでの取引先はこれまで通り債務の支払いを受けることができなくなりますから,債権の全額回収が困難となり,通常,今後の取引について現金決済を求めるか,保証金の支払いを求める可能性が高まります。 また,民事再生手続の申立には,裁判所に支払う予納金の他,弁護士費用が必要となります。 したがって,民事再生の申立には,手元資金が必要であり,当面の資金繰りについて綿密な計画が必要です。
第3として,民事再生手続の開始原因が必要です。民事再生手続の開始原因とは,①債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき,②債務者が事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき,のいずれかです。
第4として,会社の工場等の事業継続に必要な資産に担保権が存在する場合,担保権者の意向が重要になります。民事再生の申立によって,担保権の実行を止めることができないからです。事業継続に必要不可欠な資産を競売等で失うことになると,事業の継続ができないおそれがあります。これを阻止するためには,担保権者と弁済協定を締結する必要があり,担保権者の意向が非常に重要になります。