住宅の売買契約において,住宅ローン条項をつけることは買主にとって重要です。かかる条項がなければ、ローンが否認された場合にも契約を解除するならば違約金等が発生してしまうおそれがあるからです。
しかしながら、性質の悪い不動産業者等の場合、かかる住宅ローン条項が形式的にはついていても、よく契約書を精査しなければ思わぬ落とし穴にはまることがあります。
例えば、本件契約書第16条のように、「Bが、Aの提携金融機関から○○円の融資を受ける事が出来ない場合、契約を白紙解約として、手付金を返還する」となっており、一見すると住宅ローン条項が付いているようにも見えます。
しかしながら、条項を厳密に解釈すれば、提携金融機関となっており、住宅ローン条項が提携金融機関から融資を受ける事ができない場合に限定されています。仮に,提携金融機関が不動産会社の提携している消費者金融等の高金利での貸付を想定している金融機関だったらどうなるでしょうか。提携金融機関が融資をするといっている限りは,住宅ローン条項の適用を受けられなくなる恐れがあります。すなわち,買主が想定していた以上の高金利の(したがって買い主にとっては不利な)条件でのローンを組むことを余儀なくされるおそれがあるということです。
このように、住宅ローン条項のような解除条件の成立要件についてはあいまいな言葉を使わず、明確に規定するのが望ましいといえます。
以上のように,契約書については,細部に渡るまで細心の注意をもってチェックする必要があるのです。契約書は膨大な記載内容になることもあります。契約書のチェックを自社内だけでは行えないような場合は,専門家の力を借りることも大切だと存じます。