まず,任意整理で和解が成立すると,和解契約書を締結します。
仮に以下のような分割払いの合意がなされた場合を仮定します。
1 乙(債務者)は貸金業者甲(債権者)に対し800,000円の支払い義務があることを認め、これを平成○年12月から平成○年3月まで毎月末日限り20,000円ずつ(合計40回)、甲指定の銀行口座あてに振り込んで支払う。
このような分割払いの合意のことを期限の利益といいます。期限の利益とは,支払期限が到来するまでは債務を支払わなくてよいという債務者の利益のことをいいます。すなわち,分割払いの合意ができていれば,毎月末日までに2万円ずつ支払っていれば一括で80万円支払わなくてよいということです。
貸金業者が和解において期限の利益を付与した場合,通常,期限の利益喪失約款という条項が和解契約書に盛り込まれます。期限の利益喪失約款とは,債務者に期限の利益が付与されている場合において,債務者が当該期日に返済しなかった時、債権者が債務者に残りの債務全額を一括で支払うよう請求することができる旨の特約をいいます。具体的には,以下のような条項です。
2 乙(債務者)が分割金の支払いを2回以上怠った場合は,当然に期限の利益を失い,乙は貸金業者甲(債権者)に対し,第1項の金員の残金及び期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みに至るまで残額に対する年○%の割合による遅延損害金を支払うものとする。
すなわち,和解契約成立後に支払いを怠ると(本件では2回以上怠ると)期限の利益を喪失して,残金を全額一括で支払わなくてはならなくなります。本件では2回以上怠った場合に期限の利益を喪失するという内容になっていますが,何回怠った場合に期限の利益を喪失するかは貸金業者との話し合いで決まります。
和解成立後に支払いを怠らないようくれぐれも注意しましょう。