与信枠を判断するには,まずは相手の経営状態を知ることが重要です。その会社の状態が良く,回収のメドが十分につきそうであれば与信枠を大きく設定できるし,相手の会社の財務状態が悪ければ与信枠を小さく設定しておくのが一般的といえるからです。
そこで,どのように相手の経営状態を知るかですが,まず営業担当者等からの有益な情報が得られる場合があります。営業担当者等に取引先のあらゆる情報を収集するという意識を持たせることが重要です。さらに,営業担当者等が収集した情報を社内で共有化する必要があります。
次に,基本となるのは決算書類等会社の財務状態を表す書類です。ただし,決算書類を入手することは相手との関係上容易ではない場合もありえます。
そのような場合は東京商工会議所の商工リサーチや帝国データバンク等で企業情報を入手するという方法があります。
また,法務局等で入手することのできる商業登記簿謄本(履歴事項証明書等)により企業の情報が得られることがあります。特に,役員や本店所在地等に変更があったりする場合にはなんらかの事態が社内で起こっている可能性があります。
相手方に担保の設定を要求する契機として不動産登記事項証明書等も重要です。
そのようにして得た相手の情報を基本に与信枠を判断することになります。
もちろん与信枠の判断の際には相手ごとに異なる特殊な事情も多く,それらを考慮しなければならない場合もあります。
与信枠の設定の際に重要なのは,「万一相手方が倒産しても自社のダメージは最小限で済む程度の金額」であると考えられます。ただ,自社の取引相手が唯一の大口取引先という場合もあるから,そのように与信枠の設定に柔軟さを持たせられない場合(つまり,相手が倒産した場合のダメージが大きいとわかっていても取引を続けなければならないような場合)は,与信枠の設定後の行動が重要となります。