契約において,商品代金につき分割払いをする等の期限の利益を相手方に与えていた場合には,期限の利益喪失条項を入れることが重要です。
まず,期限の利益とは何でしょうか。
簡単にいうと,期限の到来までは債務の履行をしなくてもよいという債務者の利益のことをいいます。例えば,売買代金が300万円あるとして,毎月50万円の6回(6か月)払いにする場合,債務者は一括で300万円払う必要はなく,毎月50万円払えばよいことになります。この支払う期限を猶予してもらえる債務者の利益が期限の利益です。
では,期限の利益の喪失とは何でしょうか。
期限の利益の喪失とは、債務者の期限の利益を喪失させることによって、期限の到来前であっても、債務の履行を請求することができるようにすることをいいます。すなわち,上記事例で50万円の支払いを怠ったときに,残金全額を一気に請求できるようにすることをいいます。期限の利益喪失条項とは,例えば,「買主が当該金員の支払い1回でも怠ったときは当然に期限の利益を失う」等の条項のことをいいます。
相手方に期限の利益を付与した場合,期限の利益喪失条項を入れることが重要です。その理由は,この期限の利益喪失条項がなければ,仮に相手方が倒産寸前であるという情報をいち早く入手し,相手方の現在の資産状況からすればその全額を取り戻せるという状態であることが判明したとしても,相手方には期限の利益があるので法律上全額取り立てることができなくなってしまうからです。すなわち,先ほどの例でいうと,期限の利益喪失条項がなければ相手が倒産しそうでも300万円全額請求できず,各期限が来るまで50万円ずつしか請求できないことになってしまいます。