所有権留保とは、売主が売買代金を担保するため、代金が完済されるまで引渡しの終えた目的物の所有権を留保するものです。
代金の支払時期が先の場合には,万一相手方が債務不履行や倒産に陥った時に,せめて相手方の手元に残っている商品を引き揚げることができるようにするために所有権留保をつけることは重要です。
所有権留保の例としては,リース物件が挙げられます。
所有権留保は,「代金を完済するまでは目的物の所有権は売主に留保する。」というような条項を契約書に加えることで効果を発揮します。
目的物は取引の目的物である商品自体であるので,相手方からの拒否反応も少なく,相手の理解も得られやすいといえます。
ちなみに,例えば相手方が倒産したからといって自分の納入した商品を勝手に引き揚げることは刑法上の窃盗罪にあたり得ます。したがって,相手方が倒産した際には,たとえ所有権留保条項がついていたとしても,相手方の同意をとってこれらを引き上げる必要があります。
なお,所有権留保をつけていなければ,引き揚げにつき相手方の同意を取り付けることは困難です。民法上所有権は引き渡しの時点で移転するため,倒産した場合でも所有権留保条項がなければその物は引き渡しを受けた者の所有物となります。
したがって,所有権留保条項をつけることは重要といえます。
契約書の所有権留保条項の一例
「代金の支払いを完了するまでは、本件物件は売主甲の所有に属するものとする。」