『最高裁平成8年11月12日第三小法廷判決』を題材とした事例を取り上げます。
<事案の概要>
Xらは,Y社からリゾートマンションの1区分を5,000万円で購入すると共に,Y社が同所で所有・運営するスポーツクラブの会員権1口を購入し入会預託金100万円を支払った。
マンションの売買契約書や新聞広告には,「倶楽部会員権付」との記載があった。また,倶楽部会則には会員権の分離譲渡はできない規定があった。
広告や案内書には,クラブ施設として屋内プール完備とあった。しかし,Xらの再三の要求にもかかわらずYは屋内プールを着工しなかった。
そこで,Xらはマンション売買契約とスポーツ会員権契約を解除し,売買代金,預託金の返還等を求めた。
<契約書,その他具体的事実など>
ア 本件売買契約書には,特約事項として,買主は,本件不動産購入と同時に本件クラブの会員となり,買主から本件不動産を譲り受けた者についても,本件クラブの会則を遵守させることを確約する旨の記載があった。
イ マンション分譲の新聞広告には,本件マンションの区分所有権の購入者が本件クラブ会員として利用することができる旨の記載があった。
ウ 本件クラブの会則には,本件マンション区分所有権は,本件クラブの会員権付であり,これと分離して処分することはできないこと,区分所有権を譲り受けた者は,売主の承認を得て新会員として登録を受けることができる旨,記載があった。
エ 新聞広告,案内書等にプール完備を明記していた。
<設問>
Xらは,①スポーツ会員権契約を解除するだけでなく,②マンションの売買契約をも解除して,預託金及び売買代金の返還等を求めることはできますか?
<争点>
1 マンションの売買契約と本件会員権契約は不可分一体化したものといえますか?
2 Y社が屋内プールを建設して利用させるという債務が,会員権契約の,『必須の要素たる債務』といえますか?
3 両者が2個の独立した契約であっても,一方(会員権契約)の契約上の債務不履行を理由として他方の契約(マンション売買契約)を解除できますか?
<争点1について>
<争点2について>
<争点3について>
<設問に対する回答>