公証人役場に行く等して,公証人に作成してもらう遺言のこと。
公正証書遺言は,次の要件を満たさなければならない。
1 証人2人以上の立会いが必要である。
2 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で述べなければならない。
口がきけない者は,公証人と証人の前で,遺言の趣旨を通訳人の通訳により申し述べるか,又は自書しなければならない(この点についてその証書に付記する)。
3 公証人は,遺言者が口頭(口がきけない者の場合は,通訳人の通訳による申述又は自書)で述べた内容を筆記し,これを遺言者と証人に読み聞かせるか,閲覧させなければならない。
遺言者または証人が耳が聞こえない者である場合には,公証人は筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝える(この点についてその証書に付記する)。
4 遺言者と証人が,上記筆記の内容が正確なことを承認した後,各自これに署名し,印を押さなければならない。遺言者が署名することができない場合は,公証人がその事由を付記して,署名に代えることができる。
5 公証人が,当該証書は上記1~4に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名し,印を押さなければならない。
公正証書遺言の原本は公証人役場に保管され,遺言者には正本が渡される。
遺言の内容が改ざんのおそれがない反面,手間とコストがかかる。
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民法上の遺言とは,人の死後の法律関係を定める最終の意思表示をいう。遺言者(遺言をする人)の死亡によって,その効力が発生する。
遺言をするには,一定の判断能力が必要となる。通常,遺言の内容を理解し,遺言の結果を認識する能力が必要とされる。遺言作成時にこの判断能力が必要である。
15歳にならないと遺言はできない。
遺言者は,死亡するまで一度した遺言を自由に撤回できる。
遺言できる事項は法律に定められており,一例としては,誰が何を相続するか指定すること,推定相続人を廃除すること等が挙げられる。
遺言の方式については,民法の定める方式に従わなければ,遺言の効力は生じない。民法の定める方式の一例としては,自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言等が挙げられる。
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自筆証書遺言とは,遺言者が遺言の全文,日付及び氏名を自ら書き,これに印を押してする遺言である。特に第三者の立ち会いは不要である。
メリットとしては,遺言者1人で作成できるので,簡便であり,費用も低額で済むとこが挙げられる。
デメリットしては,遺言者の死後,遺言書の改ざんの危険性等がある。
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秘密証書遺言とは,次に掲げる方法で行われた遺言である。
1 遺言者が,その証書に署名し,印を押すこと。
2 遺言者が,その証書の封を閉じ,証書に押した印鑑で,封印すること。
3 遺言者が,公証人1人及び証人2人以上の前にその封書を提出して,自分の遺言書であること・その筆者の氏名・住所を申し述べること。
口がきけない者は,申し述べる代わりに,通訳人の通訳による申述するか,封紙に自書する。通訳人の通訳により申述した場合は,公証人はその旨を封紙に記載する。
4 公証人が,その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後,遺言者及び証人とともにこれに署名し,印を押すこと。
3で口がきけない者が封紙に自書したときは,公証人はその旨を封紙に記載して,申述の記載に代える。
署名以外は自書する必要はなく,パソコン等で内容を作成してもよい。内容を秘密にできるというメリットがあるが,手間とコストがかかる。