おまとめローン

複数の金融機関等から借入をしている場合に,1つの金融機関から他の借入を完済できるだけの融資を受けて他の借入をすべて完済し,借入金融機関を1社にまとめる融資のこと。

クレサラ

クレサラとは,クレジット会社とサラリーマン金融(消費者金融のこと)の総称のこと。

クレサラ問題とは,クレジット会社とサラリーマン金融等からの多重債務,過剰融資,高金利での融資,これらの会社に対する過払金返還等の問題をいう。

 

cf

サラ金

 

グレーゾーン金利(ぐれーぞーんきんり)

利息制限法の上限利率から出資法の上限利率の間をいう。

利息制限法は,金銭消費貸借契約における利息について,①元本の額が10万円未満の場合は年20%,②元本の額が10万円以上100万円未満の場合は年18%,③元本の額が100万円以上の場合は年15%,を超える部分については無効とする旨規定している。だだし,利息制限法には罰則規定がない。

出資法には,業として金銭の貸付けを行う場合,年20%(29.2%が法改正で20%に変更)を超える利息の契約をしたときには懲役等の罰則規定が定められている。

かつて利息制限法に罰則規定がなかったため,多くのサラ金業者が,利息制限法の上限利率を超えるが罰則がある出資法上限利率(当時年29.2%)以下の利率での貸付を行っていた。この利息制限法の上限利率から出資法の上限利率の間をグレーゾーン金利という。

利息制限法で定められた利率を超えて貸付けが行われ,当該契約に基づいて返済を完了した場合,一般的に不当利得となり,過払金の返還請求が問題となる。

ノンバンク

融資業務を専門に行う金融業者のこと。預金・為替業務を行わない。

具体的には,消費者金融・クレジットカード会社・リース会社・商工ローン等が挙げられる。

ブラックリスト

民間の信用情報機関が作成する個人の信用情報を記載したデータベースのこと。個人の信用情報として、債務者が債権者である金融機関に対する債務の返済ができない場合,弁護士が代理人として介入した場合等に事故情報として記載される。

ブラックリストにのると,一般的には,返済能力に問題があるとして,新たな借入が困難になったり,クレジットカードを作成するのが困難になったり,ローンを組むのが困難になったりする可能性がある。

ブラックリストへの登録期間は,5年~10年といわれている。

不当利得

法律上の原因がないのに他人の財産または労務によって利益を受け,それによって他人に損失を与えること。これに該当する者はその利益の存する限度において,これを返還する義務を負う(民法703条)。

法律上の原因の具体例としては,売買契約等が挙げられる。

不当利得の具体例としては,過払い金が挙げられる。

 

民法703条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負う。

 

事業譲渡

事業譲渡とは,会社の事業の全部または重要な一部を譲渡することをいう。会社の事業の全部または重要な一部を譲渡するには,株主総会の特別決議が必要である。

事業には,積極財産と消極財産が含まれる。積極財産には,不動産・設備・商品在庫・売掛金・知的財産権・のれん等がある。消極財産とは,借入金等の債務である。

 

代位弁済

弁済による代位という法律効果を伴う弁済をすること。弁済者は,弁済した全額について,債務者に対して求償権を取得し,その範囲で債権者が債務者に対して持っていた担保権等を債権者に代位して行使できる。例えば,保証人が主たる債務者に代わって債務を返済した場合,保証人は主たる債務者に当該金員の償還請求権(求償権)を持つことになり,債権者が債務者に担保権等を有していた場合には,保証人は債権者に代位して担保権を行使できる。

仮執行宣言

財産権上の請求権に関する判決等において,判決が確定する前であってもその判決に基づいて,仮に強制執行できる旨の裁判のこと(民事訴訟法259条)。

 

民事訴訟法259条

1 財産権上の請求に関する判決については,裁判所は,必要があると認めるときは,申立てにより又は職権で,担保を立てて,又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。

2 手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求に関する判決については,裁判所は,職権で,担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし,裁判所が相当と認めるときは,仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。

3 裁判所は,申立てにより又は職権で,担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができる。

4 仮執行の宣言は,判決の主文に掲げなければならない。前項の規定による宣言についても,同様とする。

5 仮執行の宣言の申立てについて裁判をしなかったとき,又は職権で仮執行の宣言をすべき場合においてこれをしなかったときは,裁判所は,申立てにより又は職権で,補充の決定をする。第三項の申立てについて裁判をしなかったときも,同様とする。

6 第七十六条,第七十七条,第七十九条及び第八十条の規定は,第一項から第三項までの担保について準用する。

 

任意整理(個人)

債権者と債務者が任意に返済条件等について合意して,それに基づいて返済をしていく手続き。

弁護士に任意整理手続きを依頼した場合,弁護士はまず,債権者(主として金融機関)に受任通知を送付し,債権者からの取引履歴の開示を受け,利息制限法に基づく引き直し計算を行う。当該計算書に基づいて,債権者と和解交渉を行い,和解を締結するという流れになる。

和解成立後,弁護士により和解金を代行して弁済するケースと和解の合意書に基づいて債務者が返済する場合がある。

 

会社更生(かいしゃこうせい)

会社更生法に基づいて,経営が悪化した企業を再生する手続であり,再建型の法的整理の1つである。

会社更生手続は,民事再生手続と比較して手続きが厳格であり,一般的に債権者数が多く,権利義務関係が複雑な場合等,主として大企業の再建で使われることが多い手続きである。

利用できるのは株式会社に限定されており,現経営陣は原則として退任し,裁判所が選任した管財人が経営を担当する。

住宅ローン特別条項

民事再生手続きにおいて,個人の債務者が居住する住宅を手放さずに再生を図れるように,当該住宅における住宅ローンについて特別な取扱いをすること。一定の要件を満たせば,住宅を手放すことなく民事再生手続きを受けることが可能となる。

保証

債務者が債務を履行しない場合,その履行をする責任を負うこと。保証契約は債権者と保証をする者との間において書面で行われないと効力は生じない。

信販会社

販売信用取引(クレジット取引)を主要な業務とする会社をいう。

販売信用とは,信販会社等によって消費者に付与される信用のことをいう。すなわち,信販会社等が信用を付与したカード利用者の買い物代金等を立替払いすることである。

販売信用取引(クレジット取引)の流れは,信販会社のカード利用者がそのカードでお店から商品やサービスを購入する場合,信販会社がお店に代金を立替払いし,その後,利用者が信販会社に代金相当額を支払うという形になる。

 

個人再生委員

個人民事再生手続きにおいて,再生債務者の収入及び財産の調査・確認,債権評価の補助,再生計画案作成に関する助言等の業務を行う機関のこと。一般的には,裁判所によって弁護士が選任される。

 

 

傍系親族(ぼうけいしんぞく)

共同の始祖によってつながる親族のことをいう。

兄弟姉妹,おじ,おば,おい,めい等がこれにあたる。兄弟姉妹は,父母を共同の始祖としてつながる傍系親族である。

cf

直系尊属とは,父母・祖父母・曾祖父母等のことをさす。直系とは,親子や祖父母と孫等の縦の血縁関係をいい,尊属とは,目上の者をいう。

直系卑属とは,子・孫・曾孫等のことをさす。目上の者を尊属というのに対して,目下の者のことを卑属という。

債務整理(個人)

多額の借金を背負ったときにその債務を整理すること,または,債務を整理して債務者を再生させる方法のことを一般的にさす。債務整理には,主として,任意整理・個人破産手続き・個人民事再生手続き,特定調停がある。

債権の消滅時効

債権者が一定期間債権を行使しない場合、当該債権を消滅させる制度のこと。

債権の消滅時効は,10年である(民法167条)。

 

民法167条

債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

 

借入金債務の消滅時効は,原則10年であるが,商事債権(商行為によって生じた債権)の場合は5年となる。消費者金融等金融機関からの借入は,当該金融機関が会社の場合は商事債権となり,消滅時効の期間は5年である。

 

商法第522条

商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。

 

過払金債権の消滅時効は10年である。最終取引日が消滅時効の起算点である。

 

 

 

 

債権・債務(さいけん・さいむ)

債権とは,特定の人に対して,特定の行為を請求できる権利をいう。債権を持つ人のことを債権者という。

債務とは,特定の人に対して,特定の行為をしなければならない義務をいう。債務を負う人のことを債務者という。

例えば,AがBにお金を貸し付けた場合,貸主Aは,お金の支払いを請求する権利(債権)を持ち,借主Bはお金を返済するという義務(債務)を負う。この点では,Aは債権者であり,Bは債務者である。

次に,CがDに車を100万円で売るという契約が成立した場合,CはDに車を引き渡す義務(債務)を負い,DはCに車の引き渡しを請求する権利(債権)を持つ。すなわち,車の引き渡しに関しては,Cが債務者で,Dが債権者である。これに対し,CはDに100万円の支払いを請求する権利(債権)を持ち,DはCに対して100万円の支払義務(債務)を負う。すなわち,代金の支払いに関しては,Cは債権者,Dは債務者である。

債権回収のポイント

1 日頃から行っておくべき債権管理のポイント

(1)相手方の信用状態を見極める(与信枠の設定)

ア 総論

取引相手に商品を納入する際には,通常,後払いとなる代金をいかにして回収するかが重要である。

確実に債権を回収する方法として,現金で決済する,担保を取得する,一定金額を保証金や前払金として受け取っておく等の方法がある。これは確実に債権を回収できる方法である。しかしながら,相手との関係上容易ではない場合がありうる。

そこで,担保なしで代金の回収をできる限り確実なものとするためには,まず相手方の会社に与えられる信用の枠(与信枠)をしっかりと把握することが重要である。

商品を先に納入しておいて,後で代金をもらうということは,相手方が後になっても代金をちゃんと支払ってくれるという信用を相手に与えることであり,これはお金を貸すのと同じ行為といえる。

したがって,相手方にどの程度の信頼を与えるのか,具体的にいえば,いくらまではツケにしておいても大丈夫なのかを決定する必要がある。

そして,これは必ず相手ごとに決定しなければならない。なぜなら相手によって会社の規模や経営状態は違うからである。

大きい会社であれば支払余力は高いとして大きい金額の信用を与えることができるし,取引の規模も大きいであろうからその必要も大きいといえる。しかし,大きくても経営が危なく倒産しそうな会社にあまり多くの売掛債権を作ってしまっては回収できない危険は強まるし,規模が小さくても健全な経営をしている会社ならば大きな額の信用を与えても大丈夫な可能性がある。このように与信枠の設定は相手ごとに考える必要がある。

イ 与信枠の判断方法

与信枠を判断するには,まずは相手の経営状態を知ることが重要である。その会社の状態が良く,回収のメドが十分につきそうであれば与信枠を大きく設定できるし,相手の会社の財務状態が悪ければ与信枠を小さく設定しておくのが一般的といえるからである。

そこで,どのように相手の経営状態を知るかであるが,まず営業担当者等からの有益な情報が得られる場合がありうる。営業担当者等に取引先のあらゆる情報を収集するという意識を持たせることが重要である。さらに,営業担当者等が収集した情報を社内で共有化する必要がある。

次に,基本となるのは決算書類等会社の財務状態を表す書類である。    ただし,決算書類を入手することは相手との関係上容易ではない場合もありうる。

そのような場合は東京商工会議所の商工リサーチ帝国データバンク等で企業情報を入手するという方法がある。

また,法務局等で入手することのできる商業登記簿謄本(履歴事項証明書等)により企業の情報が得られることもある。特に,役員や本店所在地等に変更があったりする場合にはなんらかの事態が社内で起こっている可能性もある。

相手方に担保の設定を要求する契機として不動産登記事項証明書等も重要である。

そのようにして得た相手の情報を基本に与信枠を判断することになる。

もちろん与信枠の判断の際には相手ごとに異なる特殊な事情も多く,それらを考慮しなければならない場合もある。

与信枠の設定の際に重要なのは,「万一相手方が倒産しても自社のダメージは最小限で済む程度の金額」であると考えられるが,自社の取引相手が唯一の大口取引先という場合もあるから,そのように与信枠の設定に柔軟さを持たせられない場合(つまり,相手が倒産した場合のダメージが大きいとわかっていても取引を続けなければならないような場合)は,後に述べる与信枠の設定後の行動が重要となる。

(2)契約書を作成する

ア 一般的な契約書の説明

(ア)契約書の役割

・契約とは何か?

 

・契約書がなくても契約は成立するか?

 

・なぜ契約書を作成するか?

・契約書の主要な役割として,

     契約内容を明確化する役割

     紛争になったとき(交渉や調停・裁判等)の証拠としての役割

     紛争が起こるのを予防する役割

の3つがある。

 


 

①契約内容を明確化する役割

ex)マンションの賃貸借契約:家賃の支払時期,支払方法(振込先),契約満了の時期(更新時期)等

 

 

②紛争になったとき(交渉や調停・裁判等)の証拠としての役割

(裁判になった時の機能)

契約書に書いてあることを裁判所は重視する。原則として法律上は法律の条文に書いてあることよりも当事者間の取り決めの方が優先される。

また,裁判所は契約書に書いてあることはまずその通りであろうと認定する。その意味で,定型の契約書等を用いることはお勧めできない。なぜなら,定型の契約書だからといって細部まで確認せずに署名押印してしまうと,裁判の時に読んでいなかったと言っても裁判所は聞いてくれないことが多い。

③紛争が起こるのを予防する役割

(トラブル予防の観点からの機能)

トラブルを防止するためにはあらゆる起こりうるトラブルを想定して詳細に記載しておくことが望ましい。アメリカの契約書は何百頁にもなるものが珍しくない。トラブルを想定して,法的観点からの契約書チェックの必要性が高い。

口約束だけでは水掛け論になる。担当者が変わった場合や契約の主体が変わった場合(会社の組織再編等)等にコンセンサスの内容が分からなくなる。

 

(イ) 上記の役割を踏まえてどのように契約書を作成すべきか。

・ 5W1Hを明確にする。

・ 自分が実現したいこと,相手に許容することは明確に盛り込む。

・ 違約金等の契約に変化を来す条項については一層明確に確認する。

・ 法律に違反しない契約書を作成する。

・ 無意味に長い必要はないし,本来はあいまいな条項も不要。

・ タイトルは契約書でも合意書でも問題なし。問題は内容。

・ 合意管轄

例:「甲乙間に争いについては,東京地方裁判所を管轄とする。」

 

 

 

 

(ウ) 債権管理と契約書

債権管理においても契約書は非常に重要なものである。

取引の際には,相手方との関係から契約書の作成そのものを躊躇してしまうような事案があるが,これは商取引の社会の話なのであるから契約書は作成するべきである。

その理由としては,前述した通り,契約書が紛争の予防につながるのと同時に,後に債権管理のみでは対応できず,債権回収の行動に移る際になくてはならないものとして機能するからである。

また,契約書において,商品代金につき分割払い等期限の利益を相手方に与えていた場合に,期限の利益喪失条項を入れることは必須である。

その理由は,この期限の利益喪失条項がなければ,仮に相手方が倒産寸前であるという情報をいち早く入手し,相手方の現在の資産状況からすればその全額を取り戻せるという状態であることが判明したとしても,相手方には期限の利益があるので法律上全額取り立てることができなくなってしまうからである。

なお,以上のように契約書作成の際にはさまざまな考慮要素があるため,契約書の作成について専門家に作成やチェックを依頼することは重要である。

 

(3)設定した与信枠及び契約書にしたがって日々細かにチェックする

ア 債権管理の前提として,企業として当然なすべきことはなされなければならない。例えば,売上が営業部門等から経理部門に漏れなく計上されるということは必須のことであるし,期日がきたら請求書を忘れずに送付するということは基本である。

イ その上で,期日到来と同時に入金があったかを漏れなくチェックする。この作業は絶対に手を抜いてはいけない。入金の確認は毎日これを行うのが基本である。そうすることで,支払が滞っている相手方を早期に発見することができる。その管理システムは企業規模に応じて様々なものがありうるが,自社にあったシステムを構築すべきである。

ウ また,与信枠については常に見直すことが重要である。一度設定した与信枠の見直しを行わないと思わぬ損害を被ることがある。あらかじめ契約書に支払が滞った場合は与信限度枠が自動的に引き下がるというような条項を入れておくことも考えられる。

 


 

(4)少しでも支払が遅れる兆しがあったら早期の対応をする。

ア 1日2日遅れでも企業が支払を遅れる際は何らかの理由がある。したがって,支払が遅れている相手方に対しては,必ず督促をする。

その方法としては督促状を送付するのでもよいし,電話で理由を尋ねるのでもよい。

イ 売掛金年齢調を作成して管理の一助とする。

未払が蓄積している相手方に対しては,残高がいくら残っているかの認識を共有し,ひいては後の裁判等にも役立てるため,残高確認書を送付し同意をもらうことが重要である。

 

 

2 債権回収の基本とその手続

(1)総論

相手方が期限までに入金してこなかったときには迅速な対応をとることが肝要である。

その順序としては,まず,

①   請求書・督促状の送付

②   相手方の残高についての認識の確認

③   相手方に対する事情聴取

を行う。

それにより,遅滞の理由がただの手続上のものであったか,財務上のものであったかが判明し,対応することが可能となる。単に忘れていただけというような手続上のものであれば回収は容易であるが,相手方の財務上の問題で支払が滞っていたとすれば何らかの対応が必要である。

履行遅滞が相手方の支払能力の問題に起因する場合には,

与信限度枠の見直し・商品の納入の中止等を行うことによりさらなる損害の防止をするとともに,

相手方を訪問し,支払方法を協議する必要がある。その際には債務承認弁済契約書を交わすことも重要である。

それでも問題が解決しない場合には支払督促等の裁判上の手続きに入っていくことになる。

 

(2)まず,①~③に相当する行動をとり,相手方が支払をしなかった理由が何であるかを突き止めることが重要である。

 

(3)④⑤について

ア 相手方の財務状態の悪化から支払が遅れていることが分かった場合には,早期の回収に努めるとともに,この時点で具体的な裁判を念頭においた対応をしなければならない。

イ 回収の努力

(ア)まず,債権回収のためには,相手方を訪問する等して,相手方が当該支払についてこれからどうするつもりかを聴取することが必要である。

その返済計画が,返済期の長短などから判断して,相手方の倒産リスクと照らし合わせて容認しうるものであれば,その旨を債務承認弁済契約書に残す(あまりに長い返済計画を認めてしまうと,その間に相手が倒産してしまうリスクがあるため,弁済期の長さと相手方がどれくらい危ないかによってその弁済計画が容認できるかどうかを決定する)。

そのような書面があれば裁判になったときにも当該債権が認められる方向に働くので,少なくとも,そもそも契約書を作っていなかった場合等には重要性が高い。

(イ)また,相手方が支払をしなかった時点で新たに担保を要求することも重要である。支払を停止している相手方に対してならば担保の設定を請求することも契約締結当初よりは心理的側面からしやすいといえる。手形ジャンプを求められた時等にも担保の設定と引き換えにすることは効果を発揮する。

ウ 裁判を念頭においた行動

裁判との関係では,当然ながら請求書や督促状,残高確認書等の書面は保存しておくことが必要である。

このような書証がない場合には,相手方と話した会話を適法に録音し,少なくとも債権の存在自体は認めていることを示す証拠を確保することも必要な場合がある。

 

(4)具体的な法的手続

ア 総論

国によって強制的に相手方の財産を金銭に換価して債権を回収するためには債務名義が必要である。

債務名義があって初めて国が強制的に権利を実現してくれるのである。裁判は債務名義を取得するためのものであり,裁判をしただけでは実際に債権を回収することはできない。

以下では,債務名義の取得方法及び強制執行について解説する。

イ 債務名義の取得

(ア) 通常訴訟

もっとも典型的な法的手続である。通常,債権の額が140万円を超える場合は地方裁判所,140万円以下の場合は簡易裁判所で行われる。

通常訴訟を提起するのは,債権の存在や内容自体に争いがある場合といえる。例えば,売買代金を請求したいが,相手方がそんな契約はそもそもしていないとか,もうすでに代金は支払ったなどと言いシラを切っているような場合などである。このような場合には,契約書などの書証がしっかりあるかを裁判官がチェックしたり,どちらの言い分が正しいかを判断するために証人尋問が行われたりする。なお,通常訴訟の最中には裁判官が間に入って当事者間で和解が行われることもあるが,裁判所が作成した和解の調書は判決文と同じ債務名義となる。相手が和解通りの弁済をしてこなかった場合には和解調書に基づいて強制執行できる。

下記の支払督促に比べて通常訴訟は弁護士費用等の費用がかかるし,時間もかかる。

(イ) 支払督促

支払督促は通常訴訟よりも簡易な債務名義の取得方法である。支払督促は弁護士に頼んでもよいが,裁判所の職員に聞きながら定型の用紙に記入する等の方法で私人でも比較的簡単に提起することができる。

債権の存在自体に争いがなく,証人尋問をしたり書証を提出したりする必要のない場合に支払督促が利用されることが多い。

この意味で,債権管理の段階で契約書や債務承認弁済契約書をしっかり作成しておくことや,請求書や確認書を保存しておくことにより,債権の存在自体は争いのないものとなり,手続が複雑で時間のかかる通常訴訟ではなく簡易な支払督促により債務名義を得られるというメリットがある。契約書を作成しておくことは,通常訴訟になった時に自分の権利を主張できるというメリットの他に,そもそも通常訴訟をしなくてもよくなる場合が多いというメリットがある。

契約書などがしっかり作成されていないと,相手方がその契約の存在自体を否認してきた場合に通常訴訟において証人尋問等の面倒な手続を踏まなければならないことになるし,証人尋問をしても認められない可能性もある。

支払督促によれば,費用は非常に安く済む。通常訴訟よりは支払督促で終わらせることができればメリットがある。

ただし,債権の存在自体に争いがないと思っていたところ相手が否定してきた場合(これを督促異義という)には,自動的に通常訴訟に移行する。

(ウ) 公正証書(強制執行認諾文言付公正証書)

債務名義を取得する方法としては,通常訴訟や支払督促の他に公正証書をあらかじめ作成しておくという方法がある。すべての公正証書に執行力があるわけではなく,金銭の一定の額の支払い又はその他代替物もしくは有価証券の一定数量の給付を目的とする請求で,約束を破れば債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されている必要がある。

売買契約等の取引をする際に,その内容をあらかじめ当事者が公証人役場において公証人に話すことにより,その内容に沿った公正証書を公証人が作成してくれる。

これにより,もしもどちらかが債務の履行をしなかった場合には通常訴訟や支払督促をするまでもなく公正証書自体が債務名義となり強制執行できるというものである。ちなみに公証人は検察官や裁判官を定年等で退職した者がなっていることが多く,法律の専門家である。したがって,わかりやすく丁寧に事情を聴取して公正証書にしてくれる。

公正証書は,取引継続的な取引の場合よりも,単発で大きな取引をする場合等に特に効果を発揮しうるものである。公正証書を作成しておくことにより,面倒な裁判をすることなく,公正証書自体を執行官に提出することにより即座に相手の財産を執行することができるようになる。

ウ 強制執行

強制執行で一番鍵となるのは,相手方のどんな財産に対して執行するかである。

例えば,相手方が土地や建物を持っていれば話は早いが,そのような財産がない場合も多い。

強制執行とはあくまで債権者が特定した相手方の財産に対して執行してくれるというものであり,裁判所や執行官は執行する相手がどのような財産を持っているのかということについては調査してくれるわけではない。

したがって,例えば取引の際に入金するための預金口座や(この場合は債権者がどこの銀行の何支店の何名義の口座かを特定する必要がある),相手の所有している不動産などを自分で調べる必要がある。

そのため,執行も念頭において取引をすると考えれば,いざというときに執行できる財産が相手方にないかについて初期の段階からそれとなく調べておくことは大変意味のあることと言える。

執行において最終的に不動産や車,預金や現金,高額な機械等の動産がない場合には,相手方の会社で日常的に使用している動産類を執行することが考えられる(例えばパソコンやデスクなど)。それらの動産自体には価値がないことが多いが,執行することにより日常業務をできなくなった相手方が,執行を解除してもらうために債務を弁済してくる可能性がある。

 

 

 

(5)相手方が破産してしまったら

ア 総論

債権管理を徹底し,債権回収を進めていた矢先,相手方が破産してしまうということは十分想定しうることである。

そこで,以下では倒産というものがどういうものであるのかを,倒産の手続の流れに沿って説明する。

イ 倒産とは

倒産には破産や再生,会社更生など様々な類型があるが,どの手続をとっても債権額は通常大幅にカットされる。

ここでは,一番典型的な倒産手続である破産の手続につき説明する。

破産というのは,簡単にいえば,ある一定時点(これを危機時期という)で債務者が経営の継続が困難であると判断した時点の当該債務者の財産を可能な限り債権者に配分して会社を解散する手続のことである。

したがって,危機時期にあるのに一部の債権者にだけ弁済してしまうと他の債権者との関係で不公平となってしまう。

通常,法人の破産手続の場合は弁護士が申立代理人として間に入るが,弁護士は法の専門家であるため,危機時期のあとに特定の債権者が債権を回収しようとしても原則としてそれを許さない。

債権回収において時間が重要なのは,相手の財産がなくなるという理由及び仮に相手方に財産があっても法律上回収できなくなるという2つの理由がある。

ウ しかしながら,弁護士といえども債権の回収を止められない債権回収の手段が存在する。

それは典型的には事前に抵当権等の担保を取ることであり,担保の類型としては,不動産に対する抵当権や,譲渡担保,人的保証等があるが,これらの設定を逐一求めることは実際の取引上困難であることが多いのもすでに述べた通りである。

そこで,不動産等への担保の設定まではできない場合に,少しハードルが低い担保の設定及びその他の債権の保全の手段を以下に列挙する。

(ア) 所有権留保

代金の支払いが先の場合には,万一相手方が債務不履行や倒産に陥った時に,せめて相手方の手元に残っている商品を引き揚げることができるようにするために所有権留保をつけることは非常に重要である。

所有権留保は,「代金を完済するまでは目的物の所有権は売主に留保する」というような条項を契約書に加えることで効果を発揮する。

また,目的物は相手方の持ち物である不動産や動産と違い,取引の目的物である商品自体であるので,相手方からの拒否反応も少なく,相手の理解も得られることが多い。

ちなみに,例えば相手方が倒産したからといって自分の納入した商品を勝手に引き揚げることは刑法上の窃盗罪にあたりうる。したがって,相手方が倒産した際には,たとえ所有権留保条項がついていたとしても,相手方の同意をとってこれらを引き上げる必要があることに注意が必要である。

なお,所有権留保をつけていなければ,引き揚げにつき相手方の同意を取り付けることは難しい(民法上所有権は引き渡しの時点で移転するため倒産した場合でも所有権留保条項がなければその物は引き渡しを受けた者の所有物となる。特に,弁護士が倒産会社の代理人としてついている時には所有権留保条項がなければ引き揚げには同意しないし,勝手に引き揚げた場合には警察への連絡も含めた断固たる対応を取るのが一般である)。したがって,所有権留保条項をつけることは重要である。

(イ) 保険に加入する

取引先からの支払が債務不履行となった場合や,取引会社が倒産した場合に備えた各種の保険に加入しておくというのも当然ながら有効な手段である。公的・民間のものを含めてたくさんあると考えられるから,そのような保険に加入してリスクヘッジすることも有効な手段といえる。

(ウ) 相殺

取引先の支払が止まった瞬間に,もし自分の方に,当該売掛先に対する買掛があれば,それを弁済せず,不良債権と相殺することは非常に重要となる。したがって,相手の支払が滞った瞬間相手方に対する債権がないかをチェックし,相殺に備えることも重要である。

(エ) 留置権

相手方の所有する物品を預かっている場合には,それを売掛のいわばカタとしてお金に換えることができる場合がある。これは留置権というものである。法律解釈が難しい側面もあるため,相手方所有の高価な物が手元にある場合,弁護士等の専門家に留置権成立の有無を聞くという手段を取りうる。留置権については仮に認められないと不法に占有しているとして損害賠償を支払わなければならない場合もありうるので,専門家の意見を聞くことが必要と考えられる。

(オ)以上は比較的相手にとってもハードルが低い方法を列挙したが,もちろん不動産担保保証,さらにはそもそも現金で支払ってもらうなどの手段が取れれば債権回収はより確実であることはいうまでもない。

以上

債権譲渡

債権者が債権の同一性を変えずにその意思によって債権を第三者に移転させること。債権者がその意思で債務者に対する債権を第三者に譲り渡すこと。

元利均等返済

毎月の返済額である元金と利息の合計が同額になる返済方式。一般的に住宅ローンの返済で用いられる。毎月の返済額が同額であるため生活設計はしやすいが,返済金額がまず利息に充当されるため元金の減りは遅い。

 

先取特権

債務者の財産について,法律に従って,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利(民法303条)。先取特権を有する者を先取特権者という。

具体例

甲が乙旅館に宿泊したにもかかわらず,甲が乙に宿泊代金を支払わない。この場合,甲は乙から預かった手荷物に対して,先取特権を行使できる(民法311条2号)。すなわち,当該手荷物を競売して,競売代金から優先して弁済を受けることができる。

民法303条  先取特権者は,この法律その他の法律の規定に従い,その債務者の財産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

(動産の先取特権)

民法311条  次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の特定の動産について先取特権を有する。

一  不動産の賃貸借

二  旅館の宿泊

三  旅客又は荷物の運輸

四  動産の保存

五  動産の売買

六  種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給

七  農業の労務

八  工業の労務

免責

債務の支払い義務がなくなること。破産手続きにおいて,免責の申立てを行い,免責決定を受けると債務の支払い義務がなくなる。

免責不許可事由

免責が不許可となる事由をいう。典型的なものとして,借金の原因がギャンブルや浪費である場合等が挙げられる。免責不許可事由がある場合でも,裁判所は破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは,免責許可の決定をすることができる。現実的には,多くの場合で免責が認められている。

免責不許可事由については,破産法252条1項に定めがある。

 

破産法252条1項 裁判所は,破産者について,次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には,免責許可の決定をする。

一  債権者を害する目的で,破産財団に属し,又は属すべき財産の隠匿,損壊,債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。

二  破産手続の開始を遅延させる目的で,著しく不利益な条件で債務を負担し,又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。

三  特定の債権者に対する債務について,当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で,担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって,債務者の義務に属せず,又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。

四  浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ,又は過大な債務を負担したこと。

五  破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に,破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら,当該事実がないと信じさせるため,詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。

六  業務及び財産の状況に関する帳簿,書類その他の物件を隠滅し,偽造し,又は変造したこと。

七  虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。

八  破産手続において裁判所が行う調査において,説明を拒み,又は虚偽の説明をしたこと。

九  不正の手段により,破産管財人,保全管理人,破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。

十  次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において,それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。

イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日

ロ 民事再生法 (平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項 に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日

ハ 民事再生法第二百三十五条第一項 (同法第二百四十四条 において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日

十一  第四十条第一項第一号,第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。

免責審尋(めんせきしんじん)

破産手続きにおいて行われる裁判官との面接のこと。免責審尋において,債務者を免責するのが妥当かどうか判断するための事情が調査される。東京地方裁判所においては,同時廃止の場合,免責審尋期日が指定され,原則として本人の出席が必要となる。

免責許可決定の確定(めんせききょかけっていのかくてい)

免責許可決定がなされると官報に公告され,債権者等から2週間以内に抗告がなければ免責が確定する。これにより破産手続開始決定により制限されていた権利・資格の制限が消滅し,復権する。借金は帳消しになり,市町村役場の破産者名簿から抹消される。

公正証書

公証人が作成する公文書のこと。金銭消費貸借契約公正証書,遺言公正証書,遺産分割協議公正証書,任意後見契約公正証書等がある。公文書であるため証明力が高い。金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求についての公正証書で債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述の記載があれば(執行証書),債務不履行があったときにすぐに強制執行が可能となる。

公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)

公証人役場に行く等して,公証人に作成してもらう遺言のこと。

公正証書遺言は,次の要件を満たさなければならない。

1 証人2人以上の立会いが必要である。

2 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で述べなければならない。

口がきけない者は,公証人と証人の前で,遺言の趣旨を通訳人の通訳により申し述べるか,又は自書しなければならない(この点についてその証書に付記する)。

3 公証人は,遺言者が口頭(口がきけない者の場合は,通訳人の通訳による申述又は自書)で述べた内容を筆記し,これを遺言者と証人に読み聞かせるか,閲覧させなければならない。

遺言者または証人が耳が聞こえない者である場合には,公証人は筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝える(この点についてその証書に付記する)。

4 遺言者と証人が,上記筆記の内容が正確なことを承認した後,各自これに署名し,印を押さなければならない。遺言者が署名することができない場合は,公証人がその事由を付記して,署名に代えることができる。

5 公証人が,当該証書は上記1~4に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名し,印を押さなければならない。

 

公正証書遺言の原本は公証人役場に保管され,遺言者には正本が渡される。

遺言の内容が改ざんのおそれがない反面,手間とコストがかかる。

 

 

cf

民法上の遺言とは,人の死後の法律関係を定める最終の意思表示をいう。遺言者(遺言をする人)の死亡によって,その効力が発生する。

遺言をするには,一定の判断能力が必要となる。通常,遺言の内容を理解し,遺言の結果を認識する能力が必要とされる。遺言作成時にこの判断能力が必要である。

15歳にならないと遺言はできない。

遺言者は,死亡するまで一度した遺言を自由に撤回できる。

遺言できる事項は法律に定められており,一例としては,誰が何を相続するか指定すること,推定相続人を廃除すること等が挙げられる。

遺言の方式については,民法の定める方式に従わなければ,遺言の効力は生じない。民法の定める方式の一例としては,自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言等が挙げられる。

 

 

cf

自筆証書遺言とは,遺言者が遺言の全文,日付及び氏名を自ら書き,これに印を押してする遺言である。特に第三者の立ち会いは不要である。

メリットとしては,遺言者1人で作成できるので,簡便であり,費用も低額で済むとこが挙げられる。

デメリットしては,遺言者の死後,遺言書の改ざんの危険性等がある。

 

 

cf

秘密証書遺言とは,次に掲げる方法で行われた遺言である。

1 遺言者が,その証書に署名し,印を押すこと。

2 遺言者が,その証書の封を閉じ,証書に押した印鑑で,封印すること。

3 遺言者が,公証人1人及び証人2人以上の前にその封書を提出して,自分の遺言書であること・その筆者の氏名・住所を申し述べること。

口がきけない者は,申し述べる代わりに,通訳人の通訳による申述するか,封紙に自書する。通訳人の通訳により申述した場合は,公証人はその旨を封紙に記載する。

4 公証人が,その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後,遺言者及び証人とともにこれに署名し,印を押すこと。

3で口がきけない者が封紙に自書したときは,公証人はその旨を封紙に記載して,申述の記載に代える。

 

署名以外は自書する必要はなく,パソコン等で内容を作成してもよい。内容を秘密にできるというメリットがあるが,手間とコストがかかる。

 

共益債権(きょうえきさいけん)

民事再生法等倒産の手続きにおいて倒産手続開始決定後に生じた請求権で,再生手続に要する費用や事業の継続に必要不可欠な費用に係る債権のこと。開始決定前に生じた請求権でも事業の継続に必要不可欠な費用については,裁判所・監督委員の許可で共益債権化できる。弁済期が到来した共益債権は,再生計画によることなく随時弁済される。

 

 

共益権(きょうえきけん)

株主の持つ権利の1つであり,株式を所有する企業の経営に参加する権利をいう。

具体的には,株式会社の最高意思決定機関である株主総会において,会社の経営方針・取締役の選解任等について決議することのできる権利である議決権,株主提案権,株主総会招集請求権,取締役・監査役の解任請求権等が共益権にあたる。

原則として,1株につき1個の議決権が認められている。単元株制度が採用されている場合には,1単元につき1個の議決権が認められている。

株主の持つ権利としては,共益権の他に自益権がある。

cf

単元株とは,株式の最低販売単位のことをいう。株式を発行する企業が1単元の株式数を定めるが,1単元の上限は1000株である。

単元株制度とは,株式の売買を単元株の整数倍で行う制度をいう。会社は定款に定めることによって単元株制度を設けることができる。

単元株制度を採用している会社においては,1単元につき1個の議決権が認められており,原則として1単元未満の株式では議決権を行使できない。例えば,1単元100株と定められている会社において,50株しか持っていない株主(このように1単元未満の株式を持つ株主を単元未満株主という)は議決権を行使できない。

ただし,単元未満株主は,残余財産分配請求権,単元未満株式の買取請求権,株式無償割当を受ける権利等の権利を有する。

単元株制度は,発行済み株式が膨大な場合は管理費用も膨大になることから,その負担を軽減する意義がある。

cf

自益権とは,株主の持つ権利の1つであり,会社から利益を受ける権利をいう。

具体的には,利益配当請求権,残余財産分配請求権,株式買取請求権等が挙げられる。

内容証明(ないようしょうめい)

内容証明郵便のこと。内容証明郵便とは,差出人・宛先・差出日付・郵便文書の内容を郵便事業株式会社が証明する郵便のこと。内容証明郵便に配達証明を付けると郵便物が配達された事実及び配達日付の証明が可能となる。

 

再生債務者

経済的に窮境にある債務者であって、その者について、再生手続開始の申立てがされ、再生手続開始の決定がされ、又は再生計画が遂行されている者(民事再生法2条1項)

再生債権(さいせいさいけん)

再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権で,共益債権または一般優先債権以外の債権のこと(民事再生法84条1項)。その他,再生手続開始後の利息の請求権 ,再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権,再生手続参加の費用の請求権も再生債権である。

 

民事再生法84条

1  再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権又は一般優先債権であるものを除く。次項において同じ。)は,再生債権とする。

2  次に掲げる請求権も,再生債権とする。

一  再生手続開始後の利息の請求権

二  再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権

三  再生手続参加の費用の請求権

 

利息制限法

お金の貸し借りを行う場合の利息及び遅延損害金の利率について,規制を加えた法律のこと。利息制限法1条によれば,上限金利は,

元本の額が10万円未満の場合 年20%

元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年18%

元本の額が100万円以上の場合 年15%

であり,当該利息を超える利率の場合はその超過した部分について無効となる。

 

単元株制度(たんげんかぶせいど)

単元株とは,株式の最低販売単位のことをいう。株式を発行する企業が1単元の株式数を定めるが,1単元の上限は1000株である。

単元株制度とは,株式の売買を単元株の整数倍で行う制度をいう。会社は定款に定めることによって単元株制度を設けることができる。

単元株制度を採用している会社においては,1単元につき1個の議決権が認められており,原則として1単元未満の株式では議決権を行使できない。例えば,1単元100株と定められている会社において,50株しか持っていない株主(このように1単元未満の株式を持つ株主を単元未満株主という)は議決権を行使できない。

ただし,単元未満株主は,残余財産分配請求権,単元未満株式の買取請求権,株式無償割当を受ける権利等の権利を有する。

単元株制度は,発行済み株式が膨大な場合は管理費用も膨大になることから,その負担を軽減する意義がある。

cf

残余財産分配請求権とは,株主が有する権利の1つで,会社が解散する際にすべての負債を返済した後の残った財産について,持ち株比率に応じて,財産の分配を受ける権利をいう。

企業の総資産より負債の方が多かった場合は,財産の分配はない。

cf

株式買取請求権とは,株主が有する権利の1つで,株式会社に対して自己の所有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる権利をいう。当該権利を行使できる場合については,会社法で定められている。行使できる場合の具体例としては,株式の譲渡制限をする場合,事業譲渡,合併等がある。

株式買取請求権は,上記の株主に重大な影響を与える会社の一部の行為について多数決で強制的に実現されてしまうことから,決議に反対する少数株主の利益を保護する趣旨で認められている権利である。

cf

株式の無償割当とは,株式会社が株主に対して持株比率に応じて無償で当該株式会社の株式を割り当てることをいう。すなわち,株式会社が既存の株主に対して持株比率に応じて無償で株式を取得させる制度である。

株式会社は株式の無償割当をする際は,①株主に割り当てる株式の数又はその数の算定方法,②株式の無償割当がその効力を生ずる日等を定める。

単独行為(たんどくこうい)

一方当事者の単独の意思表示だけで法律効果が発生する法律行為のこと。

具体例としては,取消,解除,相殺,遺贈等が挙げられる。

cf

法律行為とは,人が意思表示に基づいて法律効果を発生させる行為をいう。法律行為の例としては,契約,単独行為等を挙げることができる。

取引履歴

貸金業者等の金融機関が,借主への貸付日・貸付金額,借主からの返済日・返済金額等の情報を時系列に沿って記録したもの。

弁護士が債務整理で金融機関に介入すると,一般的に当該金融機関は取引履歴を開示する。

 

受任通知

債務者が弁護士に債務整理を依頼したという事実を債権者に通知する文書のこと。

弁護士から受任通知が債権者である金融機関に送付されることにより,当該金融機関からの取立てがストップする。

一般的に,以下のような内容が記載された文書が送付される。

債務整理開始通知

当職は、この度、後記債務者から依頼を受け、同人の債務整理の任に当たることになりました。

つきましては、次のことをお願いします。

1 今後、債務者や家族、保証人への連絡や取立行為は中止願います。

2 正確な負債状況を把握するため、貴社形式の債務調査票に債務者の貴社との取引経過 の全てを記載の上、当職宛にご返送下さい。過去に取引がある場合は、完済分も含め、 取引の当初からの経過を開示して下さい

・・・・以下省略・・・

債務者が弁護士に債務整理を依頼したという事実を債権者に通知する文書のこと。

弁護士から受任通知が債権者である金融機関に送付されることにより,当該金融機関からの取立てがストップする。

一般的に,以下のような内容が記載された文書が送付される。

合意解除(ごういかいじょ)

契約当事者の合意によって,契約を解除することをいう。

法律の規定や契約によって解除権が発生しなくとも,当事者の合意で解除できる。原状回復(契約前の状態に戻すこと)をどうするかについても当事者の合意で定めることができる。

cf

解除とは,一方当事者の意思表示により,契約の効果を遡及的に(さかのぼって)消滅させることをいう。解除により,契約は当初から存在しなかったのと同一の法律効果が生じる。したがって,契約当事者は,原則として原状回復義務(契約前の状態に戻す義務)を負う。

例えば,指輪の売買契約が解除された場合,売主は受領した代金を返還する義務を負うし,買主は受領した指輪を返還する義務を負う。売主と買主は,原則として代金の返還と指輪の返還を同時に履行する義務を負う。

解除権(解除する権利)は,民法等法律の規定によって発生する場合,契約により発生する場合がある。

いったん解除の意思表示をすると,当該意思表示を撤回することができない。

同時廃止

債務者に換価できる財産がないことが明らかで,破産手続きの費用すら用意できない場合に、破産手続開始決定と同時に、破産管財人を選任することなく破産手続き終結すること。破産法216条1項には以下の通り定めがある。

 

破産法216条1項

裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。

 

否認権(ひにんけん)

破産手続開始決定前に破産者がなした債権者を害する行為の効力を失わせ,破産財団から逸出した財産を破産財団に回復させることができる破産管財人に与えられた権利のこと。

和解調書(わかいちょうしょ)

訴訟上の和解が成立した際にその和解を調書に記載したもの。当該和解調書は確定判決と同一の効力を有しており,債務名義となる(民事訴訟法276条)。

民事訴訟法267条  和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは,その記載は,確定判決と同一の効力を有する。

和解(わかい)

民事上の紛争について,当事者が互いに譲歩して自主的に争いをやめる約束をすること(民法695条)。

 

民法695条  和解は,当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって,その効力を生ずる。

商工ローン

中小自営業者向けに貸付けを行う金融業者。融資にあたって不動産,株券,手形,ゴルフ会員権等の担保をとったり,連帯保証人をつけたりする場合が多い。公正証書を作成することもある。

善意(ぜんい)

法律用語としての意味は,ある事実を知らないことをいう。日常的に使用する善意(例:「善意でした行為」)とは異なる。

cf

悪意(あくい)

法律用語としての意味は,ある事実を知っていることをいう。日常的に使用する悪意(例:「他人に悪意を抱く」)とは異なる。

 

 

執行認諾文言付公正証書(執行証書)

金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求についての公正証書で,債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものをいう(民事執行法22条5項)。それ自体が債務名義となるため,債務の支払いを遅滞すれば裁判手続き等を経ることなく強制執行が可能となる。

契約書の重要性について

1 契約書の重要性について

(1)契約書の役割

・契約とは何か?

⇒2個以上の相対立する意思表示の合致によって成立する法律行為。日常生活における約束事。水道も電気も契約しているから使える。電車に乗るのも契約が成立している。

・契約書がなくても契約は成立するか?

⇒成立する。

・なぜ契約書を作成するか?

⇒契約書の主要な役割として,

①   契約内容を明確化する役割

②   紛争になったとき(交渉や調停・裁判等)の証拠としての役割

③   紛争が起こるのを予防する役割

の3つがある。

 

契約内容を明確化する役割

ex)マンションの賃貸借契約:家賃の支払時期、支払方法(振込先)、契約満了の時期(更新時期)等

ex)消費貸借契約(お金の貸借り):貸付時期、貸付金額、弁済期、利息、遅延損害金等

 

紛争になったとき(交渉や調停・裁判等)の証拠としての役割

(裁判になった時の機能)

契約書があることで契約自体が存在することが明らかになる。契約書がないと、仮に契約があったとしても相手方は契約が存在しなかったと争うこともある。

契約の内容に関しても明らかになる。

契約書に書かれてあることを裁判所は重視する。原則として法律上は法律の条文に書いてあることよりも当事者間の取り決めの方が優先される(例外:公序良俗に反する契約は無効。社会通念上許容されない契約は無効。例えば愛人となる契約は無効)。

また,裁判所は契約書に書いてあることはまずその通りであろうと認定する。その意味で,定型の契約書等を用いることはお勧めできない。なぜなら,定型の契約書だからといって細部まで確認せずに署名押印してしまうと,裁判の時に読んでいなかったと言っても裁判所は聞いてくれないことが多い。

紛争が起こるのを予防する役割

(トラブル予防の観点からの機能)

トラブルを防止するためにはあらゆる起こりうるトラブルを想定して詳細に記載しておくことが望ましい。アメリカの契約書は何百頁にもなるものが珍しくない。トラブルを想定して、法的観点からの契約書チェックの必要性が高い。

口約束だけでは水掛け論になる。担当者が変わった場合や契約の主体が変わった場合(会社の組織再編等)等にコンセンサスの内容が分からなくなる。

 

(2)上記の役割を踏まえてどのように契約書を作成すべきか

・ 5W1Hを明確にする。

・ 自分が実現したいこと,相手に許容することは明確に盛り込む。

・ 違約金や解除条項等の,契約に変化を来す条項については一層明確に確認する。

・ 法律に違反しない契約書を作成する。

(金銭消費貸借契約、すなわちお金を貸す契約で、法の定める利息を超えた契約は無効。闇金:トイチで金を貸す。10日で1割の利息。闇金から10日に1割の利息で100万円借りてお金を受け取った。公序良俗に反し無効。愛人契約と同じように社会通念上許容されない契約だから無効。借りたお金すら返さなくてよい。)

・ 無意味に長い必要はないし,本来はあいまいな条項も不要(例:誠実に協議する。)。

・ タイトルは、契約書でも合意書で問題なし。問題は内容。

委任契約(いにんけいやく)

当事者の一方が相手方に対して,法律行為をすることを委託し,相手方がこれを承諾することによって効果が生じる契約形態のこと。

例えば,弁護士に訴訟の代理人を依頼する契約は委任契約である。

依頼する人を委任者,依頼を受ける人を受任者という。

委任契約は,次の事情によって終了する。

・委任者又は受任者の死亡

・委任者又は受任者が破産手続開始決定を受けたこと

・受任者が後見開始の審判を受けたこと

 

cf

法律行為とは,人が意思表示に基づいて法律効果を発生させる行為をいう。

法律行為の例としては,契約,単独行為等を挙げることができる。

 

官報

独立行政法人国立印刷局が発行する定期刊行物。

自己破産開始決定・免責決定は官報に公告される。

少額管財(しょうがくかんざい)

自己破産手続きにおいて,破産者の財産が少額である場合に,破産管財人への引継予納金を20万円にして迅速に管財事件を処理できるようにした制度のこと。本件制度が利用できるのは弁護士が申立代理人の場合に限られている。東京地方裁判所においては少額管財制度が採用されている。

少額訴訟(しょうがくそしょう)

60万円以下の金銭の支払いを求める民事訴訟のこと。簡易裁判所に訴えを提起し,原則として1回の審理で手続きが終了する(民事訴訟法368条)。

民事訴訟法368条 第1項  簡易裁判所においては,訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて,少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし,同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。

弁済による代位

他人のために債務を弁済した第三者が,債権者の地位にとって代わること。弁済者は,弁済した全額について,債務者に対して求償権を取得し,その範囲で債権者が債務者に対して持っていた担保権等を債権者に代位して行使できる。

引き直し計算

貸金業者が開示した取引履歴について,利息制限法に定められた利息に基づいて,借金の残額を正しく計算し直すこと。利息制限法1条によれば,上限金利は,

元本の額が10万円未満の場合 年20%

元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年18%

元本の額が100万円以上の場合 年15%

である。

強制執行

裁判所に手続きをすることで債務者の財産を強制的に処分し,その換価代金から債務の弁済を受ける手続きのこと。

強制執行を行うには債務名義が必要となる。

債務名義としては以下のものがある(民事執行法22条)。

1   確定判決

2   仮執行の宣言を付した判決

3   抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては,確定したものに限る。)

3の2 仮執行の宣言を付した損害賠償命令

4   仮執行の宣言を付した支払督促

4の2 訴訟費用若しくは和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては,確定したものに限る。)

5   金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で,債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)

6   確定した執行判決のある外国裁判所の判決

6の2 確定した執行決定のある仲裁判断

7   確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。)

復権

破産手続開始決定により制限されていた権利・資格の制限を免責許可決定の確定により消滅させ,法的地位を回復させること。破産法255条に復権する場合について以下の通り定めがある。

破産法255条 第1項 破産者は,次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には,復権する。次条第一項の復権の決定が確定したときも,同様とする。

一  免責許可の決定が確定したとき。

二  第二百十八条第一項の規定による破産手続廃止の決定が確定したとき。

三  再生計画認可の決定が確定したとき。

四  破産者が,破産手続開始の決定後,第二百六十五条の罪について有罪の確定判決を受けることなく十年を経過したとき。

悪意の受益者

法律上の原因のないことを知りながら,他人の財産又は労務によって利益を得てそれによって他人に損失を及ぼした者。すなわち,不当利得であることを知っていながら利益を得た者をいう。「悪意」とは,法律上,「知っている」という意味である。

悪意の受益者に対しては,不当利得の元金に加え,利息を請求することができる。

 

第704条  悪意の受益者は,その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において,なお損害があるときは,その賠償の責任を負う。

 

悪意(あくい)

法律用語としての意味は,ある事実を知っていることをいう。日常的に使用する悪意(例:「他人に悪意を抱く」)とは異なる。

cf

善意(ぜんい)

法律用語としての意味は,ある事実を知らないことをいう。日常的に使用する善意(例:「善意でした行為」)とは異なる。

 

所有権留保

売買代金を分割払いとする売買契約において,売買代金が全額完済されるまで,売買目的物の所有権を買主に移転せずに売主に留保しておくこと。自動車の割賦販売が所有権留保の典型例である。

抵当権

債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利のこと(民法369条)。抵当権を有する者のことを抵当権者という。

抵当権を設定する具体例としては,マンションを購入する際,銀行等金融機関から借入を行い,当該金融機関は購入したマンションに抵当権を設定するのが一般的である。

 

民法369条  第1項 抵当権者は,債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

担保

債務者が債務を履行しない場合に備えて,債務の弁済を確保するためのもの。人的担保と物的担保がある。

人的担保の代表例として,保証がある。

物的担保の代表例として,抵当権・質権・留置権・先取特権がある。

推定計算

貸金業者が債務者との間の取引履歴をすべて開示しない場合に,開示されない部分についてその他の資料に基づいて,推定で引き直し計算を行うこと。

支払不能

債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(破産法2条11項)。

支払督促

金銭,有価証券,その他の代替物の給付に係る請求について,債権者の申立てにより,その主張から債権者の請求に理由があると認められる場合に,裁判所書記官が支払督促という債務名義を発する手続のこと。債務者が2週間以内に異議の申立てをしなければ,裁判所は,債権者の申立てにより,支払督促に仮執行宣言を付さなければならず,債権者はこれを債務名義として強制執行の申立てをすることができる。

時効の援用(じこうのえんよう)

時効完成によって利益を受ける者が,時効完成を主張すること。時効完成の利益を受けるためには,時効期間を経過しただけでは不十分であり,時効の援用が必要である。

一般的には,時効を援用する旨記載した文書を内容証明郵便にて郵送して援用する。

期限の利益

支払期限が到来するまでは債務の支払いを猶予するという債務者の利益のこと。

下記具体例第2項が期限の利益を付与する条項である。

 

具体例

1 Aは,Bに対し,本件債務の履行として,金○円支払義務のあることを認める。

2 Aは,Bに対し,前項の金員を,次の通り分割して支払う。

①    平成○年○月末日限り○円

②    同年○月末日限り○円

③    同年○月末日限り○円

・・・以下省略・・・

 

AはBへの債務の支払いを上記2項によって,同項記載の期限まで猶予されている。このようにAが支払を期限まで猶予される利益のことを期限の利益という。

 

 

 

期限の利益喪失約款

債務者に期限の利益が付与されている場合において,債務者が当該期日に返済しなかった時、債権者が債務者に残りの債務全額を一括で支払うよう請求することができる旨の特約のこと。下記具体例第3項が期限の利益喪失約款にあたる。

 

具体例

1 Aは,Bに対し,本件債務の履行として,金○円支払義務のあることを認める。

2 Aは,Bに対し,前項の金員を,次の通り分割して支払う。

①         平成○年○月末日限り○円

②          同年○月末日限り○円

③         同年○月末日限り○円

3 Aが前項の支払いを怠り,その額が○円に達したときは,当然に期限の利益を失う。

・・・以下省略・・・

 

株主(かぶぬし)

株式会社の出資者で,その会社の株を所有する者をいう。当該株式会社の構成員である。

株主はその企業のオーナーであり,保有する株式数に応じて企業経営にも影響を与える様々な権利(株主権)を有している。株主権には,共益権と自益権がある。

cf

共益権とは,株主の持つ権利の1つであり,株式を所有する企業の経営に参加する権利をいう。

具体的には,株式会社の最高意思決定機関である株主総会において,会社の経営方針・取締役の選解任等について決議することのできる権利である議決権,株主提案権,株主総会招集請求権,取締役・監査役の解任請求権等が共益権にあたる。

原則として,1株につき1個の議決権が認められている。単元株制度が採用されている場合には,1単元につき1個の議決権が認められている。

cf

自益権とは,株主の持つ権利の1つであり,会社から利益を受ける権利をいう。

具体的には,利益配当請求権,残余財産分配請求権,株式買取請求権等が挙げられる。

株式の無償割当(かぶしきのむしょうわりあて)

株式会社が,株主に対して,持株比率に応じて無償で当該株式会社の株式を割り当てることをいう。すなわち,株式会社が既存の株主に対して持株比率に応じて無償で株式を取得させる制度である。

株式会社は株式の無償割当をする際は,①株主に割り当てる株式の数又はその数の算定方法,②株式の無償割当がその効力を生ずる日等を定める。

cf

株式分割とは,発行済みの株式を分割することをいう。例えば,発行済み株式1株を2株に分割する,5株を6株に分割する等である。

株価が高騰し,一般市民が購入しづらい状況を改善するため,株式分割を行い,株価を下げるために行われることが多い。

1株を2株に株式分割すると,既存の株主の持ち株数は2倍になる。ただし,理論上1株の価値は半分になるため,株主の所有する株式の資産価値は変わらず,理論上は株価が下がることになる。

例えば,1株1000円で購入単位1000株の場合,当該株式を購入するには100万円が必要となる。この状況を改善するため,1株を2株に株式分割すれば,理論上1株500円になり,50万円で株式の購入が可能なり,購入しやすくなる。

株式の譲渡制限

株式の譲渡制限とは,株式を譲渡するにあたり当該株式会社の承諾を要するという制限のことをいう。株式の譲渡制限は定款で定める。

本来,株式会社においては,株主は株式を自由に譲渡できるのが原則であるが,小規模な会社等においては,会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぐ必要性があること等から株式の譲渡制限を定款で定めることが認められている。

株式併合(かぶしきへいごう)

発行済みの複数の株式をまとめることをいう 。例えば,発行済み株式2株を1株にする,10株を1株にする等である。

管理費用等削減のために行われることが多い。

2株を1株に併合すると,発行済み株式総数は半分になる。ただし,理論上1株の価値は倍になるため,株主の所有する株式の資産価値は変わらず,理論上は株価が上がることになる。

cf

株式分割とは,発行済みの株式を分割することをいう。例えば,発行済み株式1株を2株に分割する,5株を6株に分割する等である。

株価が高騰し,一般市民が購入しづらい状況を改善するため,株式分割を行い,株価を下げるために行われることが多い。

1株を2株に株式分割すると,既存の株主の持ち株数は2倍になる。ただし,理論上1株の価値は半分になるため,株主の所有する株式の資産価値は変わらず,理論上は株価が下がることになる。

例えば,1株1000円で購入単位1000株の場合,当該株式を購入するには100万円が必要となる。この状況を改善するため,1株を2株に株式分割すれば,理論上1株500円になり,50万円で株式の購入が可能なり,購入しやすくなる。

株式分割(かぶしきぶんかつ)

発行済みの株式を分割することをいう。例えば,発行済み株式1株を2株に分割する,5株を6株に分割する等である。

株価が高騰し,一般市民が購入しづらい状況を改善するため,株式分割を行い,株価を下げるために行われることが多い。

1株を2株に株式分割すると,既存の株主の持ち株数は2倍になる。ただし,理論上1株の価値は半分になるため,株主の所有する株式の資産価値は変わらず,理論上は株価が下がることになる。

例えば,1株1000円で購入単位1000株の場合,当該株式を購入するには100万円が必要となる。この状況を改善するため,1株を2株に株式分割すれば,理論上1株500円になり,50万円で株式の購入が可能なり,購入しやすくなる。

cf

株式併合とは,発行済みの複数の株式をまとめることをいう 。例えば,発行済み株式2株を1株にする,10株を1株にする等である。

管理費用等のコスト削減のために行われることが多い。

2株を1株に併合すると,発行済み株式総数は半分になる。ただし,理論上1株の価値は倍になるため,株主の所有する株式の資産価値は変わらず,理論上は株価が上がることになる。

株式買取請求権

株主が有する権利の1つで,株式会社に対して自己の所有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる権利をいう。当該権利を行使できる場合については,会社法で定められている。行使できる場合の具体例としては,株式の譲渡制限をする場合,事業譲渡,合併等がある。

株式買取請求権は,上記の株主に重大な影響を与える会社の一部の行為について多数決で強制的に実現されてしまうことから,決議に反対する少数株主の利益を保護する趣旨で認められている権利である。

 

cf

株式の譲渡制限とは,定款で定めることによって株式を譲渡するにあたり当該株式会社の承諾を要するという制限のことをいう。本来,株式会社においては,株主は株式を自由に譲渡できるのが原則であるが,小規模な会社等においては,会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぐ必要性があること等から株式の譲渡制限を定款で定めることが認められている。

 

cf

事業譲渡とは,会社の事業の全部または重要な一部を譲渡することをいう。会社の事業の全部または重要な一部を譲渡するには,株主総会の特別決議が必要である。

事業には,積極財産と消極財産が含まれる。積極財産には,不動産・設備・商品在庫・売掛金・知的財産権・のれん等がある。消極財産とは,借入金等の債務である。

 

cf

合併とは,複数の会社が1つの会社になることをいう。

合併の方式として,吸収合併と新設合併がある。

根保証

継続的取引で発生する一定の範囲に属する不特定の債務を保証すること(民法465条の2)。

具体例としては,極度額500万円,1年契約で甲が借入を行う場合,甲は1年間500万円を上限に何度でも借入れを受けられることになり,これを根保証した乙は,500万円の借入枠に対して保証することになる。すなわち,契約期限終了時点(1年経過時点)における借入額(500万円以内)を保証することになる。

 

民法465条の2

1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は,主たる債務の元本,主たる債務に関する利息,違約金,損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について,その全部に係る極度額を限度として,その履行をする責任を負う。

2  貸金等根保証契約は,前項に規定する極度額を定めなければ,その効力を生じない。

3  第四百四十六条第二項及び第三項の規定は,貸金等根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

 

残高ゼロ計算

貸金業者が債務者との間の取引履歴をすべて開示しない場合に,一部開示された取引履歴の冒頭部分に記載された借入残高を0円に変更して,引き直し計算を行うこと。残高無視計算,ゼロ推ともいう。

民事再生(個人)

法的整理の1つであり、民事再生法にしたがって,債務者の債務を圧縮し,再生計画を定めること等により,債務者の経済生活の再生を図る手続き。

民事再生法の目的については,同法1条に以下の通り定めがある。

 

民事再生法1条

この法律は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。

 

 

求償権

他人の債務を弁済した者が,当該債務者に対して持つ償還請求権のこと。例えば,保証人が主たる債務者に代わって債務を返済した場合,保証人は主たる債務者に当該金員の償還請求権(求償権)を持つことになる。

法定利息

利息を生じる債権について当事者間で利率を定めていないときに適用される,法律で定められた利息のこと。民事法定利率は年5%(民法404条),商事法定利率は年6%(商法514条)である。

 

民法404条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,年五分とする。

商法514条  商行為によって生じた債務に関しては,法定利率は,年六分とする。

法律行為(ほうりつこうい)

人が意思表示に基づいて法律効果を発生させる行為のこと。

法律行為の例としては,契約,単独行為等を挙げることができる。

cf

単独行為とは,一方当事者の単独の意思表示だけで法律効果が発生する法律行為をいう。

具体例としては,取消,解除,相殺,遺贈等が挙げられる。

 

消滅時効

ある権利が一定期間行使されない場合,その権利を消滅させる制度。債権の消滅時効は10年,債権又は所有権以外の財産権の消滅時効は20年である(民法167条)。

民法167条  債権は,十年間行使しないときは,消滅する。

2  債権又は所有権以外の財産権は,二十年間行使しないときは,消滅する。

清算価値保障の原則

民事再生法における再生計画に定める弁済総額は,清算価値(再生債務者が破産手続きをとったと仮定した場合の配当額)を下回ってはいけないという原則。すなわち,この原則によると,再生債務者は,破産手続きをとったと仮定した場合の配当額以上は民事再生手続きにおいて返済しなければならないことになる。民事再生法においては,当該原則がとられている。

特定債務者

金銭債務を負っている者であって、支払不能に陥るおそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの又は債務超過に陥るおそれのある法人(特定調停法2条1項)。

特定調停

特定債務者が民事調停法第2条の規定により申し立てる特定債務等の調整に係る調停であって、当該調停の申立ての際に特定調停手続により調停を行うことを求める旨の申述があったもの(特定調停法2条3項)。すなわち,支払不能に陥るおそれのある債務者について、裁判所の仲介により、話し合いを通して返済条件を軽減する旨の合意が成立する等債務者の経済的再生を支援する手続をいう。

 

留置権

他人の物の占有者が,その物に関して生じた債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる権利(民法295条)のこと。留置権を有する者を留置権者という。

具体例

甲はその所有する車が故障したためB修理工場に修理に出した。BはAの車を修理したが,Aがその修理代金を払わない。Bは,Aが修理代金を払うまで修理したAの車をBの手元に置いておくことができる。このBの権利が留置権である。

民法295条 第1項 他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる。ただし,その債権が弁済期にないときは,この限りでない。

異時廃止

破産手続開始決定後において、破産者に換価できる財産が少なく、破産手続きの費用すら不足すると認められたときに、破産管財人の申立て又は裁判所の職権により破産手続廃止の決定がされること。破産法217条1項には以下の通り定めがある。

 

破産法217条1項

裁判所は、破産手続開始の決定があった後、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、破産手続廃止の決定をしなければならない。この場合においては、裁判所は、債権者集会の期日において破産債権者の意見を聴かなければならない。

直系尊属・直系卑属(ちょっけいそんぞく・ちょっけいひぞく)

直系尊属とは,父母・祖父母・曾祖父母等のことをさす。直系とは,親子や祖父母と孫等の縦の血縁関係をいい,尊属とは,目上の者をいう。

直系卑属とは,子・孫・曾孫等のことをさす。目上の者を尊属というのに対して,目下の者のことを卑属という。

cf

傍系親族とは,共同の始祖によってつながる親族をさす。兄弟姉妹,おじ,おば,おい,めい等がこれにあたる。兄弟姉妹は,父母を共同の始祖としてつながる傍系親族である。

相殺

2人が互いに同種の目的を有する債務を負担し合っている場合で,双方の債務が弁済期にある場合,両当事者がその対当額について当該債務を消滅させること(民法505条)。

 

民法505条  第1項 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において,双方の債務が弁済期にあるときは,各債務者は,その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし,債務の性質がこれを許さないときは,この限りでない。

 

破産管財人

破産法の破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者(破産法2条12項)。通常,裁判所により破産管財人として弁護士が選任される。

破産財団

破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの(破産法2条14項)。破産財団に属さない破産者の財産は自由財産となり,破産者が自由に処分できる。

 

確定拠出型年金(かくていきょしゅつがたねんきん)

拠出された掛け金が個人ごとに区分され,掛金とその運用収益の合計額をもとに年金給付額が決定される年金をいう。日本版401Kと呼ばれている。

簡単にいうと,企業または従業員個人が毎月積み立てるお金を当該個人の判断で運用していく制度であり,運用次第で各個人が受け取る年金額に差が生じうる。また,自己の運用した資産がいくらあるのか把握することも可能である。

個人ごとに積み立てられた掛け金が明確であるため転職の際に持ち運びが容易である,将来の企業の負担が予測しやすい等のメリットがあるが,個人にとっては,将来の給付額が予測しづらく運用に失敗すると老後の生活に支障をきたすおそれがある,拠出したお金を運用する負担がある等のデメリットがある。

cf

確定給付型年金とは,あらかじめ将来の年金の給付額を確定しておき,それに応じて掛け金を算出して積み立てる年金である。日本における公的年金や企業年金の多くはこのタイプである。

受給者は将来受け取れる年金額が確定しているため,老後の生活設計がしやすいというメリットがあるが,掛け金の運用に失敗した場合や加入者の長生き等によって予定より多額の資金が必要となる場合等は,企業が穴埋めしなければならないというデメリットがある。

確定給付型年金(かくていきゅうふがたねんきん)

あらかじめ将来の年金の給付額を確定しておき,それに応じて掛け金を算出して積み立てる年金である。日本における公的年金や企業年金の多くはこのタイプである。

受給者は将来受け取れる年金額が確定しているため,老後の生活設計がしやすいというメリットがあるが,掛け金の運用に失敗した場合や加入者の長生き等によって予定より多額の資金が必要となる場合等は,企業が穴埋めしなければならないというデメリットがある。

cf

確定拠出型年金とは,拠出された掛け金が個人ごとに区分され,掛金とその運用収益の合計額をもとに年金給付額が決定される年金をいう。日本版401Kと呼ばれている。

簡単にいうと,企業または従業員個人が毎月積み立てるお金を当該個人の判断で運用していく制度であり,運用次第で各個人が受け取る年金額に差が生じうる。また,自己の運用した資産がいくらあるのか把握することも可能である。

個人ごとに積み立てられた掛け金が明確であるため転職の際に持ち運びが容易である,将来の企業の負担が予測しやすい等のメリットがあるが,個人にとっては,将来の給付額が予測しづらく運用に失敗すると老後の生活に支障をきたすおそれある,拠出したお金を運用する負担がある等のデメリットがある。

秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん)

秘密証書遺言とは,次に掲げる方法で行われた遺言である。

1 遺言者が,その証書に署名し,印を押すこと。

2 遺言者が,その証書の封を閉じ,証書に押した印鑑で,封印すること。

3 遺言者が,公証人1人及び証人2人以上の前にその封書を提出して,自分の遺言書であること・その筆者の氏名・住所を申し述べること。

口がきけない者は,申し述べる代わりに,通訳人の通訳による申述するか,封紙に自書する。通訳人の通訳により申述した場合は,公証人はその旨を封紙に記載する。

4 公証人が,その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後,遺言者及び証人とともにこれに署名し,印を押すこと。

3で口がきけない者が封紙に自書したときは,公証人はその旨を封紙に記載して,申述の記載に代える。

 

署名以外は自書する必要はなく,パソコン等で内容を作成してもよい。内容を秘密にできるというメリットがあるが,手間とコストがかかる。

 

 

cf

民法上の遺言とは,人の死後の法律関係を定める最終の意思表示をいう。遺言者(遺言をする人)の死亡によって,その効力が発生する。

遺言をするには,一定の判断能力が必要となる。通常,遺言の内容を理解し,遺言の結果を認識する能力が必要とされる。遺言作成時にこの判断能力が必要である。

15歳にならないと遺言はできない。

遺言者は,死亡するまで一度した遺言を自由に撤回できる。

遺言できる事項は法律に定められており,一例としては,誰が何を相続するか指定すること,推定相続人を廃除すること等が挙げられる。

遺言の方式については,民法の定める方式に従わなければ,遺言の効力は生じない。民法の定める方式の一例としては,自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言等が挙げられる。

 

cf

自筆証書遺言とは,遺言者が遺言の全文,日付及び氏名を自ら書き,これに印を押してする遺言である。特に第三者の立ち会いは不要である。

メリットとしては,遺言者1人で作成できるので,簡便であり,費用も低額で済むとこが挙げられる。

デメリットしては,遺言者の死後,遺言書の改ざんの危険性等がある。

 

cf

公正証書遺言とは,公証人役場に行く等して,公証人に作成してもらう遺言のこと。

公正証書遺言は,次の要件を満たさなければならない。

1 証人2人以上の立会いが必要である。

2 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で述べなければならない。

口がきけない者は,公証人と証人の前で,遺言の趣旨を通訳人の通訳により申し述べるか,又は自書しなければならない(この点についてその証書に付記する)。

3 公証人は,遺言者が口頭(口がきけない者の場合は,通訳人の通訳による申述又は自書)で述べた内容を筆記し,これを遺言者と証人に読み聞かせるか,閲覧させなければならない。

遺言者または証人が耳が聞こえない者である場合には,公証人は筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝える(この点についてその証書に付記する)。

4 遺言者と証人が,上記筆記の内容が正確なことを承認した後,各自これに署名し,印を押さなければならない。遺言者が署名することができない場合は,公証人がその事由を付記して,署名に代えることができる。

5 公証人が,当該証書は上記1~4に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名し,印を押さなければならない。

 

公正証書遺言の原本は公証人役場に保管され,遺言者には正本が渡される。

遺言の内容が改ざんのおそれがない反面,手間とコストがかかる。

 

競売

債務者が債権者に支払いをしないときに,裁判所を通じて対象物を差し押さえて売却し,その代金を債権者に分配すること。

約定利息

債権者と債務者の契約によって定められる利息のこと。その場合の利率のことを約定利率という。約定利率は,原則として当事者間で自由に取り決めることができるが,利息制限法等の制約がある。

総量規制

個人の借入総額が,原則,年収等の3分の1までに制限される仕組みのこと(一部例外あり)。

総量規制の対象となるのは,「個人向け貸付け」のみであって,「個人向け保証」「法人向け貸付け」「法人向け保証」は対象にならない。また,個人が事業用資金として借り入れる場合,原則として総量規制の対象とはならない。

自己破産

破産法に基づいて,裁判所に申立てを行い,通常の生活をするために必要な最低限度のものを除いた自己の財産を債権者に分配して,自己の債務を免除してもらう制度のこと。

自己破産手続きの流れは以下の通りである。

自由財産の拡張制度

破産者の経済的更生という目的を達成するために,本来的自由財産以外の破産者の財産についても自由財産として認める制度。破産者の生活状況・収入,当該自由財産の種類・額等を考慮して裁判所が決定する(破産法34条4項)。

 

破産法34条4項

裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。

自由財産(本来的自由財産)

破産者の財産の中で破産者が自由に処分できる財産のこと。

具体的には,99万円以下の現金,金銭以外の差押えが禁止された財産(①生活に欠くことができない衣服・寝具・家具・台所用具・畳及び建具,1か月間の生活に必要な食料及び燃料等)等がある。

 

 

自益権(じえきけん)

株主の持つ権利の1つであり,会社から利益を受ける権利をいう。

具体的には,利益配当請求権,残余財産分配請求権,株式買取請求権等が挙げられる。

株主の持つ権利としては,自益権の他に,共益権がある。

cf

共益権とは,株主の持つ権利の1つであり,株式を所有する企業の経営に参加する権利をいう。

具体的には,株式会社の最高意思決定機関である株主総会において,会社の経営方針・取締役の選解任等について決議することのできる権利である議決権,株主提案権,株主総会招集請求権,取締役・監査役の解任請求権等が共益権にあたる。

原則として,1株につき1個の議決権が認められている。単元株制度が採用されている場合には,1単元につき1個の議決権が認められている。

cf

単元株とは,株式の最低販売単位のことをいう。株式を発行する企業が1単元の株式数を定めるが,1単元の上限は1000株である。

単元株制度とは,株式の売買を単元株の整数倍で行う制度をいう。会社は定款に定めることによって単元株制度を設けることができる。

単元株制度を採用している会社においては,1単元につき1個の議決権が認められており,原則として1単元未満の株式では議決権を行使できない。例えば,1単元100株と定められている会社において,50株しか持っていない株主(このように1単元未満の株式を持つ株主を単元未満株主という)は議決権を行使できない。

ただし,単元未満株主は,残余財産分配請求権,単元未満株式の買取請求権,株式無償割当を受ける権利等の権利を有する。

単元株制度は,発行済み株式が膨大な場合は管理費用も膨大になることから,その負担を軽減する意義がある。

自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)

遺言者が遺言の全文,日付及び氏名を自ら書き,これに印を押してする遺言のこと。特に第三者の立ち会いは不要である。

メリットとしては,遺言者1人で作成できるので,簡便であり,費用も低額で済むことが挙げられる。

デメリットしては,遺言者の死後,遺言書の改ざんの危険性等がある。

 

 

cf

民法上の遺言とは,人の死後の法律関係を定める最終の意思表示をいう。遺言者(遺言をする人)の死亡によって,その効力が発生する。

遺言をするには,一定の判断能力が必要となる。通常,遺言の内容を理解し,遺言の結果を認識する能力が必要とされる。遺言作成時にこの判断能力が必要である。

15歳にならないと遺言はできない。

遺言者は,死亡するまで一度した遺言を自由に撤回できる。

遺言できる事項は法律に定められており,一例としては,誰が何を相続するか指定すること,推定相続人を廃除すること等が挙げられる。

遺言の方式については,民法の定める方式に従わなければ,遺言の効力は生じない。民法の定める方式の一例としては,自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言等が挙げられる。

 

cf

公正証書遺言とは,公証人役場に行く等して,公証人に作成してもらう遺言である。公正証書遺言は,次の要件を満たさなければならない。

1 証人2人以上の立会いが必要である。

2 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で述べなければならない。

口がきけない者は,公証人と証人の前で,遺言の趣旨を通訳人の通訳により申し述べるか,又は自書しなければならない(この点についてその証書に付記する)。

3 公証人は,遺言者が口頭(口がきけない者の場合は,通訳人の通訳による申述又は自書)で述べた内容を筆記し,これを遺言者と証人に読み聞かせるか,閲覧させなければならない。

遺言者または証人が耳が聞こえない者である場合には,公証人は筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝える(この点についてその証書に付記する)。

4 遺言者と証人が,上記筆記の内容が正確なことを承認した後,各自これに署名し,印を押さなければならない。遺言者が署名することができない場合は,公証人がその事由を付記して,署名に代えることができる。

5 公証人が,当該証書は上記1~4に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名し,印を押さなければならない。

 

公正証書遺言の原本は公証人役場に保管され,遺言者には正本が渡される。

遺言の内容が改ざんのおそれがない反面,手間とコストがかかる。

 

 

cf

秘密証書遺言とは,次に掲げる方法で行われた遺言である。

1 遺言者が,その証書に署名し,印を押すこと。

2 遺言者が,その証書の封を閉じ,証書に押した印鑑で,封印すること。

3 遺言者が,公証人1人及び証人2人以上の前にその封書を提出して,自分の遺言書であること・その筆者の氏名・住所を申し述べること。

口がきけない者は,申し述べる代わりに,通訳人の通訳による申述するか,封紙に自書する。通訳人の通訳により申述した場合は,公証人はその旨を封紙に記載する。

4 公証人が,その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後,遺言者及び証人とともにこれに署名し,印を押すこと。

3で口がきけない者が封紙に自書したときは,公証人はその旨を封紙に記載して,申述の記載に代える。

 

署名以外は自書する必要はなく,パソコン等で内容を作成してもよい。内容を秘密にできるというメリットがあるが,手間とコストがかかる。

 

 

 

解除(かいじょ)

一方当事者の意思表示により,契約の効果を遡及的に(さかのぼって)消滅させることをいう。解除により,契約は当初から存在しなかったのと同一の法律効果が生じる。

したがって,契約当事者は,原則として原状回復義務(契約前の状態に戻す義務)を負う。

例えば,指輪の売買契約が解除された場合,売主は受領した代金を返還する義務を負うし,買主は受領した指輪を返還する義務を負う。売主と買主は,原則として代金の返還と指輪の返還を同時に履行する義務を負う。

解除権(解除する権利)は,民法等法律の規定によって発生する場合,契約により発生する場合がある。

いったん解除の意思表示をすると,当該意思表示を撤回することができない。

財団債権(ざいだんさいけん)

破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権のこと。

 

破産法2条7項  この法律において「財団債権」とは,破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいう。

質権

債権の担保として債務者または第三者から受け取った物を債権者が占有し,その物について他の債権者に先立って優先的に弁済を受ける権利のこと(民法342条)。質権を有する者を質権者という。占有を移転する点で抵当権とは異なる。

質権を設定する具体例としては,質屋に時計等を持って行ってお金を借りて,当該時計等に質権を設定することが挙げられる。質屋は,期限までにお金を返さないと時計等を売却して債権を回収することができる(質屋営業法19条)。ただし,民法上の質権の場合は,このような流質は認められず,原則として裁判所での競売手続によって換価する必要がある(民法349条)。

 

民法342条  質権者は,その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し,かつ,その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

民法349条  質権設定者は,設定行為又は債務の弁済期前の契約において,質権者に弁済として質物の所有権を取得させ,その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。

質屋営業法19条

1 質屋は,流質期限を経過した時において,その質物の所有権を取得する。但し,質屋は,当該流質物を処分するまでは,質置主が元金及び流質期限までの利子並びに流質期限経過の時に質契約を更新したとすれば支払うことを要する利子に相当する金額を支払つたときは,これを返還するように努めるものとする。

2 質屋は,古物営業法第十四条第二項 の規定にかかわらず,同法第二条第二項第二号 の古物市場において,流質物の売却をすることができる。

連帯保証

債務を負った人と連帯して,債務の弁済を保証すること。保証契約の1類型であり,書面で行われないと契約は不成立である。

通常の保証契約との違いとして,債権者は,債務を負った本人に請求する前に連帯保証人に債務を請求ができるし,債務を負った本人に資力がある場合も連帯保証人に対して債務の請求ができることが挙げられる。

遅延損害金(ちえんそんがいきん)

債務の支払いが遅れた場合に支払わなければならない損害賠償金のこと。遅延損害金の額は法定利率(民事なら年5%,商事なら年6%)によって定める。ただし,約定利率(当事者の特約で取り決めた利率)が法定利率を超えるときは,約定利率による(民法419条1項)。

民法419条1項 金銭の給付を目的とする債務の不履行については,その損害賠償の額は,法定利率によって定める。ただし,約定利率が法定利率を超えるときは,約定利率による。

民法404条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,年五分とする。

商法514条  商行為によって生じた債務に関しては,法定利率は,年六分とする。

過払金

債務者が消費者金融等の金融機関に返し過ぎたお金のこと。すなわち,債務者が当該金融機関から利息制限法で定められた利率を越える違法な利息で借入れをしている場合に、利息制限法に従えば支払う必要のなかったお金のこと。

利息制限法第1条には,以下の通り定めがある。同条の定めを超える利率で貸付を行っていた場合において,同条の従って引き直し計算を行うと,過払い金が発生する可能性がある。

 

利息制限法第1条

金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。

1 元本の額が十万円未満の場合 年二割

2  元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分

3  元本の額が百万円以上の場合 年一割五分

 

遺留分(いりゅうぶん)

一定の相続人が取得することを保証された,被相続人の遺産の一定割合のこと。

被相続人がこの割合を超えて,遺贈や生前贈与等をした場合は,遺留分を有する相続人(遺留分権利者)は,一定割合を超えた部分を取り戻すことができる。

遺留分権利者は,配偶者・子・直系尊属であり,兄弟姉妹は遺留分権利者ではない。

遺留分の割合について,直系尊属のみが相続人である場合は,被相続人の財産の3分の1,それ以外の場合(相続人が,①配偶者のみ,②配偶者と子,③子のみ,④配偶者と直系尊属)は,被相続人の財産の2分の1である。

例えば,相続人が配偶者及び被相続人と配偶者の子2人である場合,配偶者と子2人の遺留分は,相続財産の2分の1である。この遺留分に法定相続分をかけたものが,それぞれの遺留分権利者の取り分となる。

本件において,

配偶者は,2分の1×2分の1(法定相続分)=4分の1,

子は各々,2分の1×2分の1(法定相続分)×2分の1(子2人のため2分の1ずつ)=8分の1,

が取り分となる。

cf

被相続人とは,相続財産の所有者,すなわち,亡くなった人のことをいう。

cf

直系尊属とは,父母・祖父母・曾祖父母等のことをさす。直系とは,親子や祖父母と孫等の縦の血縁関係をいい,尊属とは,目上の者をいう。

これに対して,目下の者のことを卑属という。子・孫・曾孫等のことを直系卑属という。

遺言(いごん)

民法上の遺言は,人の死後の法律関係を定める最終の意思表示をいう。遺言者(遺言をする人)の死亡によって,その効力が発生する。

遺言をするには,一定の判断能力が必要となる。通常,遺言の内容を理解し,遺言の結果を認識する能力が必要とされる。遺言作成時にこの判断能力が必要である。

15歳にならないと遺言はできない。

遺言者は,死亡するまで一度した遺言を自由に撤回できる。

遺言できる事項は法律に定められており,一例としては,誰が何を相続するか指定すること,推定相続人を廃除すること等が挙げられる。

遺言の方式については,民法の定める方式に従わなければ,遺言の効力は生じない。民法の定める方式の一例としては,自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言等が挙げられる。

 

 

cf

自筆証書遺言とは,遺言者が遺言の全文,日付及び氏名を自ら書き,これに印を押してする遺言である。特に第三者の立ち会いは不要である。

メリットとしては,遺言者1人で作成できるので,簡便であり,費用も低額で済むとこが挙げられる。

デメリットしては,遺言者の死後,遺言書の改ざんの危険性等がある。

 

 

cf

公正証書遺言とは,公証人役場に行く等して,公証人に作成してもらう遺言である。公正証書遺言は,次の要件を満たさなければならない。

1 証人2人以上の立会いが必要である。

2 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で述べなければならない。

口がきけない者は,公証人と証人の前で,遺言の趣旨を通訳人の通訳により申し述べるか,又は自書しなければならない(この点についてその証書に付記する)。

3 公証人は,遺言者が口頭(口がきけない者の場合は,通訳人の通訳による申述又は自書)で述べた内容を筆記し,これを遺言者と証人に読み聞かせるか,閲覧させなければならない。

遺言者または証人が耳が聞こえない者である場合には,公証人は筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝える(この点についてその証書に付記する)。

4 遺言者と証人が,上記筆記の内容が正確なことを承認した後,各自これに署名し,印を押さなければならない。遺言者が署名することができない場合は,公証人がその事由を付記して,署名に代えることができる。

5 公証人が,当該証書は上記1~4に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して,これに署名し,印を押さなければならない。

 

公正証書遺言の原本は公証人役場に保管され,遺言者には正本が渡される。

遺言の内容が改ざんのおそれがない反面,手間とコストがかかる。

 

 

cf

秘密証書遺言とは,次に掲げる方法で行われた遺言である。

1 遺言者が,その証書に署名し,印を押すこと。

2 遺言者が,その証書の封を閉じ,証書に押した印鑑で,封印すること。

3 遺言者が,公証人1人及び証人2人以上の前にその封書を提出して,自分の遺言書であること・その筆者の氏名・住所を申し述べること。

口がきけない者は,申し述べる代わりに,通訳人の通訳による申述するか,封紙に自書する。通訳人の通訳により申述した場合は,公証人はその旨を封紙に記載する。

4 公証人が,その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後,遺言者及び証人とともにこれに署名し,印を押すこと。

3で口がきけない者が封紙に自書したときは,公証人はその旨を封紙に記載して,申述の記載に代える。

 

署名以外は自書する必要はなく,パソコン等で内容を作成してもよい。内容を秘密にできるというメリットがあるが,手間とコストがかかる。

 

遺贈(いぞう)

遺言によって,個人または法人に対して,財産の一部または全部を無償で与えること。

遺贈は単独行為(一方当事者の単独の意思表示だけで法律効果が発生する法律行為)である。

遺贈をする者を遺贈義務者という。遺贈によって利益を得る者を受遺者という。

胎児も受遺者となりうる。相続人も受遺者となりうる。

遺贈には,遺贈義務者が全財産またはその一定割合(例えば,遺産の3割といった形で指定)を遺贈する包括遺贈と,特定の財産についてのみ遺贈する特定遺贈(例えば,「A土地を遺贈」,「金500万円を遺贈」)等がある。

cf

単独行為とは,一方当事者の単独の意思表示だけで法律効果が発生する法律行為をいう。

金銭消費貸借契約

お金の貸し借りについての契約。

消費貸借契約については,民法587条に定めがある。

 

民法587条  消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって,その効力を生ずる。

 

消費貸借契約のうち,お金の貸し借りに関するものが金銭消費貸借契約である。

 

非免責債権

破産手続きにおいて免責許可をもらっても,破産者が支払いも免れることができない債権のこと。具体的には,租税,罰金,養育費等がある(破産法253条)。

破産法253条  免責許可の決定が確定したときは,破産者は,破産手続による配当を除き,破産債権について,その責任を免れる。ただし,次に掲げる請求権については,この限りでない。

一  租税等の請求権

二  破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

三  破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)

四  次に掲げる義務に係る請求権

イ 民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務

ロ 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務

ハ 民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条 ,第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務

ニ 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務

ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって,契約に基づくもの

五  雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権

六  破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)

七  罰金等の請求権